岩井俊二、ハリウッドのヴァンパイアブームに挑戦状?新作『ヴァンパイア』は異端な男の衝動描く!
5日、東京・代官山蔦屋書店にて、岩井俊二監督トークショー&サイン会が行われ、岩井監督が8年ぶりに手掛けた長編ドラマ映画『ヴァンパイア』について、著述家の湯山玲子と語り合った。
本作は、岩井監督が、脚本・監督・撮影監督・音楽・編集・プロデュースを兼任、全編英語で撮り下ろした意欲作。病身の母親と暮らす高校教師の主人公・サイモンが、ウェブサイトで知り合った死を望む少女たちに血を求めるものの、やがて純愛へと発展する叙情的なラブストーリーだ。
「アメリカでは、『ヴァンパイア』は、ゾンビまで含めると巨大なジャンルになっている。(本作は)ちょうどそのブームと重なった」と岩井監督。そもそも「このジャンルでやろうとは思っていなかった」そうで、「似て非なるもの、まだ誰も作っていないもの」を制作しようと考えていたところ、本作が誕生したという。
本作の主人公の「設定は人間で、吸血鬼衝動がある。でもにんにくに弱いとか、吸血鬼ルールが適応されない」。そんなキャラクターに似ているのは、例えば、「太宰治の『人間失格』、三島由紀夫の『仮面の告白』」など。そうした「異端な男の衝動」は監督の中で一つのジャンルとしてあるらしく、「何年かに1回は出てくる」ほど強烈で、「それをやりたかった」と言う。
実はこのアイデアは、「『リリィ・シュシュのすべて』を書く前、10年前に見つけた」という。「人間誰でも、ある小さなことで、つじつまの合わない所にはまってしまう。『わかっているのにやめられない』というか。自分の描きたいものはそこで、このジャンルだと描けると思った」と静かな自信をたたえた表情で語っていた。(取材・文:尾針菜穂子)
映画『ヴァンパイア』は9月15日よりシネマライズほかにて全国順次公開