『るろうに剣心』ヒットの裏側!勝因は全国的な宣伝展開ができたこと
和月伸宏の人気コミックを原作にした映画『るろうに剣心』が公開後わずか17日で興行収入20億円を超えるヒットを記録している中、本作の宣伝プロデューサーを務める小杉陵が宣伝の裏側を語った。
小杉は、これまでにも『L change the WorLd』(原作:大場つぐみ・小畑健)や『パラダイス・キス』(原作:矢沢あい)といったコミック原作映画の宣伝を手掛けてきた。「コミック原作映画は、すでにファン層が形成されていることが強みであると同時に、原作やファンの期待が大きな壁のように立ちはだかります。でも、その壁を乗り越えるチャレンジが宣伝する醍醐味(だいごみ)だと思います」と明かすように、コミック原作であることのメリットとデメリットは表裏一体だ。
だが『るろうに剣心』に限っていえば、コミック原作であることのメリットはデメリットを補って余りあるほど大きかったという。「『原作マンガを読んでいた世代』、それから年齢層が下がって『アニメで触れた世代』、さらに『OVAで観た世代』というふうに、ここ20年くらいはどの世代にも『るろうに剣心』の下地があるんです」と語る小杉は、そのことを考慮し、あえて観客の年齢層を絞らない戦略を採用した。
具体的には、洋画的な空中戦(レッドカーペットイベント、キャストのテレビ稼働、テレビCMの大量投下)と、邦画的な地上戦(全国横断るろう人キャンペーン、セブン-イレブンを中心とした全国規模の大型タイアップ)を組み合わせ、幅広い世代に本作の魅力をアピール。また、公開直前までロンドンオリンピックが開催されていたことも計算に入れ、オリンピック終了から公開までの約2週間でさまざまな宣伝材料を投下した。
同時に、本編が春に完成していたことで試写会を多く組むことが可能になり、マスコミ業界内での話題作りも成功した。「今のマスコミの世代の方っていうのは、『るろうに剣心』にドンピシャな世代の方なので、良くも悪くも興味はあるんですよね」というように、原作の人気が宣伝を後押し。公開直前には多くの雑誌が『るろうに剣心』を特集した。
そうしたことの積み重ねが、2週連続ナンバーワンを含む大ヒットという結果だ。とりわけ興行のローカルシェアは75パーセントを記録しており、全国的に『るろうに剣心』旋風が吹き荒れているといっても過言ではない。「タイアップや全国キャラバンなどで、お客さんにとって手の届くところに作品を持っていけたのが勝因だったように思います」と分析した小杉だが、ヒットの最大の理由が作品の出来栄えにあることは重々承知。「クランクイン前の練習や衣装合わせから、何かすごいものができる予感がありました。宣伝では、そういうところを伝えていきたいと思っていました」と語る口ぶりからは、小杉こそが誰よりも本作のファンであることがうかがえた。(編集部・福田麗)
映画『るろうに剣心』は公開中