園子温、覚悟の凱旋 被災地で『希望の国』無料上映
鬼才・園子温監督が、東日本大震災の被災地・気仙沼でもロケを行った映画『希望の国』の凱旋(がいせん)無料上映を、7日に「三陸映画祭 in 気仙沼」で行った。登壇した園監督は「今日は覚悟を決めてここに立ちました」と決意をにじませ、胸中を吐露した。
「三陸映画祭 in 気仙沼」は、気仙沼市の被災した建物を劇場として使用し、10月5日から7日まで行われた無料上映の映画祭。『希望の国』はクロージング作品に選ばれ、ジャパンプレミアを行った。カンヌ・ベネチア・ベルリンという世界三大映画祭を渡り歩いてきた園監督だが、「世界のどんな映画祭よりも意義のある映画祭だと思います」と本映画祭をたたえている。
当日、400名の観客の前で「決して晴れ晴れとした気分ではありません」と打ち明けた園監督は、上映後のロビーで「今日娘に連れられて、この映画を観られてよかった」と一般客から声を掛けられたと言い、「僕はこの方のこの言葉が聞けただけで上映できてよかったなと思いました」と感慨に浸った。
気仙沼をロケ地に選んだ理由は「この機会を逃したら永遠にこの風景は消えてしまうだろうなと思い、刻印として刻みつけたかったからです」と明かした園監督。今年1月の撮影時にプレゼントされたという気仙沼市観光キャラクター「ホヤぼーや」のジャンパーを着て、「このジャンパーからは暖かさと同時に勇気もいただいた」と感謝の念を示した。
本作は、東日本大震災後の日本を舞台に、再び大地震と原発事故に見舞われ、政府の方針に振り回されながらも強く生きようとする人々の姿を描いた骨太なドラマ。9月に開催された第37回トロント国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞している。(編集部・小松芙未)
映画『希望の国』は10月20日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開