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「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」のクリエイター、デヴィッド・チェイスが描いた長編デビュー作とは?

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(左から)デヴィッド・チェイス監督、スティーヴン・ヴァン・ザント、プロデューサーのマーク・ジョンソン、ジョン・マガロ
(左から)デヴィッド・チェイス監督、スティーヴン・ヴァン・ザント、プロデューサーのマーク・ジョンソン、ジョン・マガロ

 第50回ニューヨーク映画祭(50th N.Y.F.F)に出品された話題の新作『ノット・フェイド・アウェイ(原題) / Not Fade Away』について、監督を務めたテレビドラマ「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」のクリエイター、デヴィッド・チェイスが、音楽を担当したスティーヴン・ヴァン・ザント、プロデューサーのマーク・ジョンソン、さらに主演ジョン・マガロと共に語った。

 同作は、1960年代のニュージャージー州の郊外を舞台に、若者ダグラス(ジョン・マガロ)がバンドデビューを夢見て仲間たちと演奏をし始めるが、そこには現実という大きな壁が立ちはだかっていたという青春群像劇。ブルース・スプリングスティーンのもとで、ギタリストとして活躍するスティーヴン・ヴァン・ザントが音楽監修し、さらにジェームズ・ガンドルフィーニジャック・ヒューストンブラッド・ギャレットなどが脇を固めている。デヴィッド・チェイスは、今作が長編映画監督デビュー作となる。

 音楽を監修したスティーヴン・ヴァン・ザントは「製作前に、僕はデヴィッド監督に、(主役がミュージシャンであるため)俳優もできるミュージシャンを探すべきだと要求したんだ。すると彼から、『それは忘れろ!』と言われたよ。『まず俳優であることの方が重要だ』と言われたんだ。(俳優たちを見つめながら)もちろん、ミュージシャンとしての才能の全くない奴ら(俳優たち)ばかりだったから(ジョーク)、俳優たちを集めて僕がブートキャンプを開いて、彼らと3か月間も演奏のトレーニングをしたんだ。でも参加した俳優全員が、そんな短い期間をしっかり音楽に捧げてくれて、みんなが演奏できるようになった。僕が何十年も掛けて学んだことを、彼らは3か月でよくやってくれたよ」と語った通り、実際に俳優たちの演奏した音楽が映画内で使われている。

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 60年代を舞台にしたことについてデヴィッド・チェイス監督は「どこか不思議な時代だったと思うんだ。特に60年代後半は、何か大きな出来事が毎日のように起きていた気がする」と答えた後、主役を演じたジョン・マガロは「この時代に生まれたわけではないけど、とても興味深い時代だと思っていたんだ。でも、僕らみたいな若い世代でも、家族とのドライブで、両親たちが聞いていた60年代のボブ・ディランなどの曲を、クラシックのラジオ番組を通して聞かされていたことがある。あの時代の曲は、どこか時代を超越したものがあって、僕らよりもさらに若い世代であっても聞いている曲でもあると思う。だから、(観客には)曲に親近感を持ってもらえるだろうし、さらにストーリーの普遍性にも共感を持ってもらえると思う」と明かした。

 オリジナルソングについてスティーヴン・ヴァン・ザントは「この映画で僕が作曲したものは一曲だけなんだ。その理由は、ビートルズなども含め、多くの成功してきたバンドは、最初の2、3年間はカバーバンドとしてスタートしている経験がある。でも近年は、そういったカバーバンドはほとんどなくなっている。僕は、そんな近年の傾向を駄目だと思っているくらいなんだ。なぜなら、カバーバンドとしてスタートさせることで、自分たちのバンドのアイデンティティーを見つけることができると思っているからだ。そして、後にカバーした曲を分析しながら、自分に適した曲を作れるようになっていくからでもある。だから、映画内で描かれているバンドも、そういった箇所でさえも、真実味のあるように製作している。そして映画内では、彼らがバンドとして力を付けてきたときに、僕が作曲したオリジナルソングを歌ってもらっているんだ」と語る通り、バンドの成長過程がこの映画の見所の一つでもある。

 映画は、ミドルクラスの家庭に育ったニュージャージー州の若者と厳しい父親との関係、さらに若者ダグラスの恋人との関係を交錯させながら、古き良き時代のロックンロールが描かれている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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