妻夫木聡、浅野忠信が語った対照的な役づくりとは?
映画『悪人』で第34回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞し、その演技力に高い評価を集めている妻夫木聡と、海外進出後は『バトルシップ』『マイティ・ソー』など数々のハリウッド大作で活躍している浅野忠信。最新作『黄金を抱いて翔べ』で共演した二人が、役者として、男としての互いの魅力を語った。
本作は、作家の高村薫が1990年に第3回日本推理サスペンス大賞を受賞した同名小説を、井筒和幸監督が映画化したクライムサスペンス。大阪を舞台に6人の男たちが、銀行の地下に眠る時価240億円の金塊を狙う。
妻夫木が演じた幸田は、犯罪者を相手に闇の世界で生きてきた暗い陰を持つ男。妻夫木は、役柄を自分の中に取り入れるため、クランクイン前に一人で大阪を訪れ、役づくりに励んだ。「映画『悪人』のときも『マイ・バック・ページ』でも自分の場所を探しに行ったんですが、カチッとはまる瞬間がある。今回は幸田のトラウマのきっかけとなった教会に足を運び、2日かけてキリストの絵を描き続けました」。悲観的な男・幸田の精神性を追求する日々を過ごしたという。
一方、幸田の大学時代からの友人である北川を演じた浅野は衣装にこだわりを見せた。「ひたすら台本を読んで考えた北川のイメージは赤。衣裳について昔から納得しないときはかなり戦ってきた方なので、今回は最初から「赤に統一したい」などと、どんどんアイデアを出しました」。台本を読むうちに、「北川は角刈り!」とイメージを決め、自ら髪を切った。
役づくりの方法も全く違う彼らだが、共演した印象はどうだったのだろう? 妻夫木は、「浅野さんは、すごく素直に人生を生きている人」と裏表のない浅野の性格に憧れを抱いていることを告白。「あまりにも本音を言ってしまうので、ドキドキすることもある」と隣で心配する場面もあるそうだが、その正直さが浅野の最大の魅力だという。
隣で照れくさそうに聞いていた浅野は、「僕は全然気も利かないんですが、妻夫木くんは周りに心遣いができる人」と妻夫木の優しさを絶賛。役者としても「自分の中で納得いかないことがあったら、何が原因かを自分で見つけようと努力してみるということを実践している俳優。彼のようにエネルギーのある男がどんどん活躍してくれるのを見るのはとてもうれしくて心強い」と語った。
物静かな幸田がひょうひょうと明るい北川に引かれるように、妻夫木と浅野もまた、自分が持たない部分に魅力を感じていた。二人をはじめ、役者同士の才能がぶつかり合う本作を観ると、日本映画の今後に明るい未来を感じることができるはずだ。(編集部:森田真帆)
映画『黄金を抱いて翔べ』は11月3日より全国公開