『のぼうの城』に黒澤明『影武者』合戦映画は名作ぞろい!
歴史好きの女性を指す「歴女」という言葉もすっかり定着するなど、映画の世界でも最近、人気が高まっている「歴史物」だが、その数ある歴史物のジャンルから特に、長篠の戦いや南北戦争など実在の合戦をモチーフとした作品に迫ってみた。
まずは最新作から現在公開中の『のぼうの城』に注目したい。戦国時代、成田長親を城代とする忍城(おしじょう)が、豊臣秀吉方の武将・石田三成率いる2万の兵に攻め入られ、わずか500(領民を合わせ約3,000)の兵で守りきったという史実を基に、長親軍VS光成軍の戦いを描く戦国エンターテインメント大作だ。VFXを使用し、趣向を凝らした戦闘シーンがスピード感たっぷりに展開され、歴史物好きだけでなく、アクション好きもうならせる仕上がりとなっている。
『のぼうの城』は現代の最新技術を徹底的に駆使して描いた作品だが、その対極の一つにあるのが、黒澤明が戦国武将・武田信玄のエピソードを取り上げた『影武者』だ。ラストシーンの長篠の戦いで、武田の騎馬隊が織田軍へ攻め入って行く描写は、CGなど一切なしで撮影されているにもかかわらず、その迫力は観る者を圧倒する。CGが当たり前の今だからこそ改めて観たい作品といえるだろう。
日本の映画やドラマでは長篠の戦いや川中島の戦いなど、さまざまな名戦を取り上げた作品が目立つが、ハリウッド映画へと目を向けてみると、アメリカ唯一の内戦である南北戦争を背景とした作品が多いことに気付く。古くは『風と共に去りぬ』が、誰もが知る名作として挙げられるが、それから半世紀以上経ち製作されたのが『コールド マウンテン』だ。どちらも南北戦争を背景に壮大なスケールで描かれるラブストーリーとなっていて、同じような設定でありながらも微妙に異なるヒロインの描き方などに注意して観ると面白い。
最後に少し毛色の違う作品として、現在公開中の『リンカーン/秘密の書』を。第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンが、実はバンパイアハンターだったという設定の下、彼がバンパイアらと壮絶な戦いを繰り広げる。本作にも南北戦争を描いている場面が一部あるが、大きく異なるのはこちらはバンパイア映画である点。バンパイア映画というジャンルで南北戦争をどう描いているのか、ぜひ注目してほしい。史実を基に作られたこれらの作品は、楽しめる上に歴史も学べて一挙両得。歴史好きの方はもちろん、そうでない方もトライしてみては?(編集部・堀達夫)