キーラ・ナイトレイ、新作『アンナ・カレーニナ』の魅力は原作の完璧な濃縮と明かす
映画『ベッカムに恋して』で注目を浴び、その後映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなどで世界的な人気女優となったキーラ・ナイトレイが、新作『アンナ・カレーニナ(原題) / Anna Karenina』について語った。
キーラ・ナイトレイ主演 映画『ある公爵夫人の生涯』写真ギャラリー
同作は、政府高官カレーニン(ジュード・ロウ)の妻で、息子の母親でもあるアンナ(キーラ・ナイトレイ)は、兄夫婦の諍いを仲裁するためにモスクワを訪れる。そこで、若い貴族の将校ヴロンスキー(アーロン・ジョンソン)に強く惹かれ始めて情事に陥るが、その行為がもとで社交界から締め出されていくというドラマ作品。「戦争と平和」などでおなじみのロシアの文豪レフ・トルストイの同名小説を映画化している。ジョー・ライト監督は、キーラ・ナイトレイとは今作で3度目のタッグを組んでいる。
まずキーラは、アンナの時代のロシアと現在を比較して「当時より今の方が、安易に生きられることは間違いないと思う。なぜなら、夫やボーイフレンドとの間に子どもが居て、彼らと別れたとしても、アンナのように子どもと会うことができなくなることはないし、社会からつまはじきにされることもないわ。逆に、当時のロシアと異なっていない点もある。それは現在もルール(規則)をもとにみんな生きていて、もしあなたがそのルールを破れば、あなたに反対する人々が現れる。つまり、どこの場所に居ても、どの時代に生きても、正直に生きているアンナが、不本意なルールのもと社交界から締め出され、自己崩壊に陥っていくことは、今日の人々にも理解してもらえるはずよ」と語った。
トム・ストッパードの脚本について「まず、820ページ(英語版)近くもある原作を、どこか重要な箇所が抜けていると人々に感じさせずに、120ページにまとめあげたのは、本当に素晴らしいわ。おそらくテレビ映画だと、2時間版を2話に分けて製作し、上手くストーリーを伝えることができるけれど、2時間の映画を製作しようとすると、必ず何か失う部分があるの。だから、初めてトムの脚本を読んだときに、原作すべてのエッセンスが入っていたから驚かされたわ」と脚本の完成度の高さに驚かされたようだ。
アーロン・ジョンソンとの共演について「彼の演技のアプローチは、わたしとは全く違っているの。わたしは、椅子に座ってキャラクターを(監督と)話し合ったり、原作や本を読んで詳細なリサーチしていくのが好きだけれど、彼はキャラクターについて話し合ったりすることはしなかった。でも、撮影3週間前に行った台詞抜きで、体の動きだけで表現しながら演じたリハーサルを20分間の映像にした際に、彼はすべてのシーンの動きを把握していて、台詞を発せずに見事に体の動作だけでキャラクターを作り上げていたの。そんな演技を見て、本当に素晴らしい俳優だと思ったわ」と語った。ジョー・ライト監督は、この動作だけを撮影したリハーサルの映像を原点として、それを振り返りながら撮影を行っていたそうだ。
最後にキーラは、初めて原作を読んだ19歳のときは、ロマンチックで夢中にさせられる恋だと感じたが、去年撮影前に原作を読み返したときは、よりダークな要素を原作に感じ、さらにアンナがヒロインか、またはアンチヒロインであるかという道徳観の境目についての疑問を考えるようになったそうだ。映画は、時代劇作品を感じさせない演出が、文学作品であるにもかかわらず、興味深い映画に仕上げている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)