トロント国際映画祭の最高賞を受賞した、オスカー最有力候補の作品とは?
映画『ハングオーバー』シリーズのブラッドリー・クーパーが、映画『ハンガー・ゲーム』の人気女優ジェニファー・ローレンスとタッグを組んだオスカー有力候補の新作『シルバー・ライニングス・プレイブック(原題) / Silver Linings Playbook』について、デヴィッド・O・ラッセル、ロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァー、クリス・タッカーと共に語った。
ブラッドリー・クーパー出演 映画『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』写真ギャラリー
同作は、ドラッグ依存症からリハビリ施設に入っていたパットは、妻とも別れ、家も仕事もなかったために、実家へ戻って人生を立て直そうとする。だが、妻に未練のあったパットは、彼女とよりを戻そうと考え、妻の友人である未亡人のティファニーに近づくが、その彼女がダンス大会出場のために彼にパートナーになれと交換条件を出したことから、彼女に徐々に惹かれ始めていくというドラマ作品。トロント国際映画祭の最高賞である観客賞を受賞している話題作だ。
制作経緯についてデヴィッドは「5年前に故シドニー・ポラックから、作家マシュー・クイックが執筆した同名小説を読むように勧められたんだ。実はシドニーと故アンソニー・ミンゲラ監督が、この小説の映画化権を所有していたんだ」と彼ら二人から作品を引き継いだことを明かした。さらにこの小説については「僕の子どもも、この小説の主人公パットのように双極性障害を患っていたことで、すぐにこの本に引き込まれていった。ちなみに、この小説が僕の初めての脚色作品になったんだ。僕自身は小説のキャラクターそれぞれの複雑さが面白かった。ただ、あの時は制作費などの都合上で制作できずに、結局、映画『ザ・ファイター』を先に製作したんだ」と述べた。その後脚本をこの映画に出演する俳優のために改稿して、それから制作することになったそうだ。
映画内で、重要なシーンとなるジェニファー・ローレンスとのダンスについてブラッドリー・クーパーは「彼女と最初に会ったのが、ダンススタジオだった。彼女のことは何も知らなかったが、数分後には(ダンスで)汗だくになっていて、その体を彼女につかまれていたから、恥ずかしかったよ……(笑)。ただ、ダンスの振り付け師のマンディ・ムーアが素晴らしくて、すべてが共同作業になっていった。さらにデヴィッド監督もダンスのリハーサルから参加し、僕らのダンスの動きを見ながら、何を省き、何を撮影するか決めていたんだ。その後、クリス・タッカーもダンスに加わり、新たな刺激を与えてくれた。そんな共同作業で行ったダンスが、それぞれのキャラクターの関係にも反映していったと思っている」と語った。
父親役を演じたロバート・デ・ニーロは「確かに、駄目な息子を受け入れる難しい役だったが、撮影中に僕らがシーンを演じている際に、デヴィッド監督が声をかけて即興的な指示をしたり、手持ちカメラで撮影したり、無秩序な家族の状態を作り上げていたんだ」と、自分の演技ではなく、デヴィッド監督の演出を評価した。最後にデヴィッド監督は、ジェニファー・ロレーンスは、ブラッドリー・クーパーの恋人役には若く、まだ他のキャストと比べ演技経験が浅いと思っていたそうだが、オーディションで彼女の演技に圧倒され、キャスティングしたことを明かした。
トロント国際映画祭の最高賞を受賞し、オスカー候補作品として有力視されている本作は、個性的なキャスト達が展開する素晴らしいアンサンブル作品に仕上がっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)