『レ・ミゼラブル』のトム・フーパー監督、ヒュー・ジャックマンとアン・ハサウェイの舞台裏明かす
映画『英国王のスピーチ』でアカデミー賞監督賞を受賞したトム・フーパーが、新作『レ・ミゼラブル』についてアップルストアのイベントで語った。
トム・フーパー監督作品 映画『レ・ミゼラブル』写真ギャラリー
本作は、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの小説を基にした27年以上上演され続けている人気ミュージカルを映画化した作品。革命に揺れる19世紀フランスを舞台に、パンを盗んだ罪で19年間投獄された男ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)の波瀾(はらん)万丈な人生と、数奇な運命に翻弄(ほんろう)された人々の人生を描き出している。舞台版と同様に、ストーリーはすべて歌で語られている。
ヒュー・ジャックマンの変貌ぶりについて「彼は15kgもやせてくれたんだ。オープニングシーンで彼がロープを引っ張っているが、あの撮影の前に彼は36時間も水を飲まずに役作りをし、顔の肌はまるで骸骨みたいに浮き出ている状態で演じてくれた。さらに、髪の毛も以前にたたかれた跡が残っているような雑な髪の切り方をした。これは、後に市長にまで上り詰めるジャン・バルジャンとは全く似てなくて、ジャベール警部が最初は全く気付かないようにしなければならなかった」とリアルな姿を追求したようだ。またヒュー・ジャックマンは、実際に刑務所を訪れ、囚人の目の動きを研究したそうだ。
今作は、録音された曲をリップシンクせずに、実際に撮影現場でレコーディングしたが、今後この傾向は続くのだろうか。「もちろんこの手法に変わってほしいが、それはミュージカルの形態によって違うと思う。コーラスやダンスが主体のミュージカルだとこの手法では現実的ではなく、まだ難しいかもしれない。僕はこの映画を製作する前に、エージェントに『レ・ミゼラブル』の映画化について話した際に、『あれはライブ・ミュージカルだから成り立つものだ』と言われた。でも僕は、それが理由でこの映画を観ない人が居るなんてあり得ないと思ったことが、この型破りな発想が生まれることになった」と明かした。
薄幸の女性ファンテーヌを演じたアン・ハサウェイの演技について「彼女は、まるでファンテーヌの生まれ変わりのように、これまで彼女自身が体験したことのないようなアプローチをしていた。彼女は6か月前から歌の準備をし、さらに彼女が歌った名曲『夢やぶれて(I Dreamed a Dream)』では、泣きながら歌うシーンがあるため、いかに泣いている状態でも声のピッチを落とさずに歌うか訓練していたよ」と語った後、さらにアンは結核に侵されるファンテーヌを演じるために体重も落とし、カメラをまわしながら髪を切るシーンにも挑戦したと話した。
映画は、歌声を撮影と同時にレコーディングするだけでなく、クレーン撮影や長回しなどの映像面でも工夫を凝らし、ミュージカル作品を超えた究極の一本に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)