オスカー監督アン・リー、新人発掘の秘話を明かす!
本年度アカデミー賞で11部門にノミネートされた映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』を手掛けたアン・リー監督が、自らオーディションで発掘し、主役に大抜てきした新人俳優スラージ・シャルマの才能と可能性について語った。
映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』フォトギャラリー
アン・リー監督が世界的ベストセラー小説「パイの物語」を3D映画化した本作は、嵐で遭難した少年パイとトラとの奇跡的な漂流生活を描く感動作。家族を失い、たった一人で救命ボートに逃れ、ボートに潜んでいたトラと共に過酷なサバイバルを繰り広げるパイ。その大役を演じるにふさわしい才能として3,000人もの候補者の中から選ばれたのが、映画出演はおろか演技の経験すらなかった17歳の新人俳優スラージ・シャルマだ。
シャルマと初めて会ったとき、「自分が探しているものを全て持っている」と感じたというリー監督は、「泣くシーンの本読みで、胸が切り裂かれるような迫真の演技をしてくれた。その瞬間、『この子だ』と思いました」とオーディションを振り返る。インド出身のシャルマは海を見たことも泳ぐこともできなかったが、3か月間のトレーニングを経て海上を漂流する演技に初挑戦し、見事リー監督の期待に応えたのである。
どう猛なトラと共存するために知恵と勇気を振り絞り、自らの絶望や狂気と闘いながらたくましく成長していくパイを圧倒的な表現力で体現したシャルマ。劇中には彼が涙を流すシーンが何度か登場するが、リー監督の言う通り、どの場面もリアリティーと臨場感にあふれており、観る者の心を強く揺り動かすはずだ。
そんなシャルマの将来性についてリー監督は、「間違いなく素晴らしい。才能のある人は伸びるからね」と太鼓判を押す。かつてオスカー受賞作『ブロークバック・マウンテン』の主役にヒース・レジャーを起用し、俳優としての実力を大きく開花させたリー監督。彼に見いだされ、スクリーンに強烈な存在感を焼き付けたシャルマから、今後も目が離せそうにない。(文:斉藤由紀子)
映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』は全国公開中