永瀬正敏、震災を後の世代に伝えたい…被災地からのメッセージに決意新た
2日、オーディトリウム渋谷で映画『3.11後を生きる』公開記念舞台あいさつが行われ、中田秀夫監督、岩手県のタラ漁師・五十嵐康裕さん、そして俳優の永瀬正敏が登壇した。もともとはテレビ番組として企画されていたという本作だが、取材を進めるうちにテレビ局と意見の相違が生まれてしまい、自主制作として完成したのだという。
2011年3月11日に起きた東日本大震災からおよそ2年。『リング』『女優霊』などのジャパニーズホラーの旗手として知られる中田監督だが、一方では『ハリウッド監督学入門』をはじめとする良質なドキュメンタリー作品も制作。本作は、そんな彼がドキュメンタリストとして、東日本大震災を追った作品だ。
この日のイベントには、本作に登場するタラ漁師・五十嵐さんの実話を基に撮影された短編映画『四苦八苦』(日本公開未定)に主演した永瀬も登壇。この『四苦八苦』ができた経緯について、中田監督は「『3.11後を生きる』を撮っているとき、メキシコから宗教を題材とした短編を撮ってくれというオファーがありまして。最初のリクエストはお坊さんが出てくるスリラー映画だったんですけど、12分じゃ撮れないだろうということになり。もし(『3.11後を生きる』に登場する)タラ漁師の五十嵐さんと、恐山菩提寺の南直哉院代が学校の同級生だったら、という視点で撮りました」と語る。
その短編に永瀬が主演することになったのは偶然の導き。東日本大震災後、ファンだという大槌町の青年から「僕たちは家などが流れましたけど、もう一度がんばって映画館を作るので、僕たちを楽しませる映画を作ってください。その映画を僕たちの映画館で上映しますから」という内容のメールをもらったという永瀬はその後、オファーがあった『四苦八苦』の撮影場所がたまたま大槌町だったことに縁を感じたとのこと。「(震災を)後の世代にきちんと伝えてほしいと言われた」と出演を決意した裏側を明かした。
この日のイベントでは、五十嵐さんの口から、仮設住宅をめぐる行政の理不尽な対応、タラを安く買いたたかれてしまい、タラ漁の休業を余儀なくされていることなど、被災地の人たちが置かれている現状も報告された。最後に五十嵐さんは「まだまだ復興には10年から15年はかかるんじゃないですかね」とポツリと漏らした。(取材・文:壬生智裕)
映画『3.11後を生きる』はオーディトリウム渋谷にて公開中