俳優ジェフ・ブリッジスが語るアメリカの偏食と飢えの問題とは?
去年のサンダンス映画祭で話題となったドキュメンタリー映画『プレイス・アット・ザ・テーブル(原題) / Place at the Table』について、俳優ジェフ・ブリッジス、共同監督クリスティ・ジェイコブソンとロリー・シルバーブッシュ、シェフのトム・コリッキオ、そして飢餓撲滅機関Share Our Strengthのビル・ショアが語った。
ジェフ・ブリッジス出演 映画『トゥルー・グリット』写真ギャラリー
同作は、アメリカでおよそ5,000万人が直面している偏食と飢えの問題を掘り下げ、その改善策をどのように図るかを提示し、その中でも低収入所得者の家庭は安い冷凍食品や缶食品に頼る傾向や、中西部の州では近所に新鮮な野菜や果物が売っていない環境、失業者への政府の対応などが描かれている。
ジェフ・ブリッジスが今作に出演した理由は「1984年に僕がエンド・ハンガー・ネットワークを立ち上げ、1986年にその機関を通して兄が主演するテレビ映画『ヒドゥン・イン・アメリカ(原題) / Hidden in America』(職のないシングルファーザーが子どもを育てる映画)を製作したんだ。今日の飢えの問題の状況は、当時の映画内容とほぼ変わらなくて、子どもたちが飢えの問題を抱えていることは国にとっても恥ずかしいことだが、個人レベルでも恥ずかしいと思っている人たちが多く、子どもたちの中には(貧しいことで)食べられないことを我慢している子もいるほどなんだ」と、裕福な国アメリカだからこそ、その貧しさを人に伝えられない国民が居るようだ。
そのため、具体的な打開策について共同監督のロリー・シルバーブッシュは「我々個人が偏食と飢えの問題を言及しなければ、政府に関与してもらえない。でも、我々が政府の機関にこの偏食と飢えの問題に関して尋ねたところ、(人々から)電話やE-mailをほとんど受けていないことがわかったの。一般レベルで偏食と飢えに関して認識が不足しているの。だから、我々は映画『不都合な真実』(環境問題)、『スーパーマンを待ちながら』(教育問題)のような作品を制作することで、(この問題に関して)政府が後に法案を可決できるようにすべきだと思った」と製作動機を明かした。
映画内では2つの職に就く人が、それでも家族を養うのに苦労している。「僕自身も小さなビジネスのオーナーで、最低賃金を上げるべきだと思っている。オバマ大統領は1時間9ドルにすべきだと提案している(現在の政府の最低賃金の設定は7.25ドル)。僕個人は、それでさえ不十分だと思っていて、もっと一挙に値上げする必要があるだろう。だが、なぜ最低賃金を上げられないかと言うと、会社が賃金を払えずに解雇する人々が増えるからだと指摘する人もいるが、それは企業への減税で対処できると思う。理にかなったレベルに最低賃金を上げれば、公的支援を必要とする人々が減る。それが減税につながることにもなる」とトム・コリッキオが語った。
映画は、先進国アメリカで考えられない偏食と飢えの問題が起きていることを目の当たりにした。飽食でありながら、ニートの多い日本でも鑑賞すべき映画なのかもしれない。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)