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世界中の映画祭で注目を集めている話題作『マイ・ブラザー・ザ・デビル』とは?

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(左から)サリー・エル・ホセイニ監督、ジェームズ・フロイド
(左から)サリー・エル・ホセイニ監督、ジェームズ・フロイド

 世界中の映画祭で注目を集めている話題作『マイ・ブラザー・ザ・デビル(原題) / My Brother the Devil』について、サリー・エル・ホセイニ監督と主役ジェームズ・フロイドが語った。

 同作は、エジプト系イギリス人の14歳の少年モー(ファディ・エルサイド)は、ギャングがはびこるイギリスのハックニーで一家と暮らしていた。彼は身体が強く近所でも一目置かれているギャングの兄ラシッド(ジェームズ・フロイド)を尊敬しているが、ラシッドは弟には自分と似た人生を歩まずに大学進学を勧めていた。だがある日、ラシッドの秘密をモーが知り、その関係が徐々に崩れ始めていくというドラマ作品。監督はサリー・エル・ホセイニがメガホンを取り、本作はサンダンス映画祭の撮影賞、ベルリン国際映画祭のパノラマ部門で、ヨーロッパ・シネマズ・レイベルを受賞している。

 ラシッド役のジェームズ・フロイドのキャスティングについてサリー監督は「キャスティング開始当初は、リアリティーを出すためにこのラシッド役は俳優をキャスティングしたくなかった。でも実際には、この役が性的探索する(ゲイに関して興味を抱き始める)こととその演技の難しさから、俳優経験のない人物をキャスティングできなかった」と語り、そこでオーディションを開くことになり「ジェームズの演技に圧倒されたの。わたしはリサーチの過程で多くのギャングメンバーに会ったりしながら、その世界を理解していこうとしていて、ジェームズもまた同じやり方(メソッド手法=役柄の内面に注目しながら感情を追体験して、より自然な演技を行う)を望んいたことで波長があった」とキャスティング理由を明かした。

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 弟役を演じた俳優経験のないファディ・エルサイドとのタッグは「ファディは撮影開始2日前にキャスティングされたため、僕がメソッド手法で演じたラシッド役に関してしか僕のことは撮影中は知らなかった。だから、撮影後にようやくファディは僕の性格や人柄を知ることになったんだ(笑)。もっともそのやり方は、映画内の瞬間瞬間のリアリティーを追求したからでもあるんだ」と答えると、サリー監督は演出手法について「わたしは彼ら俳優には極力演じないように、自然な流れで行動するように指示しながら撮影をしていて、撮影中と休憩中も俳優たちにはさほど変わらない環境を作っていたと思う」とあくまでリアリズムを追求したようだ。

 サリー監督は意図的にテロリストとはかけ離れた題材を手掛けたそうだ。「わたしは、この撮影が行われたハックニーから10分位離れたところに住み、自分がエジプト人であることから、エジプト系イギリス人の兄弟を描いたことで特別な文化の観点を描いていることは理解していた。でも中東系だからといって、人々の先入観を利用したテロリストを題材にして描くことはしたくなかった」と明かし、さらに「そこでわたしは、個人的にもなじみのあったアイデンティティー(人種や性別)の問題を描いた。わたしは近所に住む少年たちがいかにプレッシャーを感じながら(男らしい)大人に成長していくかを見ていた。だから、ゲイに対しての強烈な拒否反応を示す環境も知っていた。だから、この映画はカミングアウトの作品ではなく、偏見に対しての作品だと思っている」と明かした。

 映画は、サリー・エル・ホセイニ監督は今作がデビュー作と思えないほど、個性的なキャラクターを作り上げ、それらを通して人種的偏見と性的先入観を見事に描ききっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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