ロバート・レッドフォードを直撃!1970年代の左翼過激派組織を描いた監督兼主演作とは?
映画『明日に向って撃て!』、『スティング』などでおなじみの名優ロバート・レッドフォードが、新作『ザ・カンパニー・ユー・キープ(原題) / The Company You Keep』について語った。
同作は、1970年代に世間を騒がした左翼過激派組織、ウェザー・アンダーグラウンドの元幹部ジム(ロバート・レッドフォード)は、現在は他人になりすまして30年間ひっそりと暮らしていたが、当時の仲間シャロン(スーザン・サランドン)が逮捕されたのをきっかけに、警察に追われることになっていくサスペンス・ドラマ作品。キャストにはシャイア・ラブーフ、テレンス・ハワード、ジュリー・クリスティ、ニック・ノルティのほか、天才美少女歌姫ジャッキー・エヴァンコも出演する。レッドフォードは監督兼主演を務めている。
ジムの娘役を演じたジャッキー・エヴァンコについて「バンクーバーでこの映画の準備中に、この11歳の子役だけが決まっていなかった。僕にとって映画の子役は大きな意味合いを持ち、俳優として意識し過ぎる子役ではなく、 自然な演技のできる子役をいつも探していた。ところが大概オーディションでは、母親が子どもを連れ、まるで母親の方が映画に出演したがっているケースや、演技に集中しすぎる子役が多い。そんなオーディションを見て、フラストレーションを感じていたときに、滞在しているホテルのテレビでジャッキーが作曲家プッチーニの曲を歌っているのを観たんだ。彼女が大勢の観客の前でパワフルなパフォーマンスを披露していることに驚き、キャスティングしたんだ」
観客にウェザー・アンダーグラウンドを理解してもらうえで「上映後に観客同士が、質問し合うような映画を製作することを望んでいる僕は、アメリカの歴史に関して、今日の人々の認識は乏しいと思っている。本来は、過去のネガティブな体験から教訓を学び、同じことを繰り返さないようにすべきだが、歴史認識が乏しい僕らアメリカ人は同じ過ちを繰り返してしまうため駄目なんだ。今日の社会は、進歩することに忙し過ぎるようにも思える。ウェザー・アンダーグラウンドが活動していた頃は、僕自身もメンバーと同じくらいの年で、精神的には彼らに近いものもあった。けれど、僕はニューヨークの舞台で俳優としての仕事を始め、すでに家族も居たため、ウェザー・アンダーグラウンドに関わりはしなかったが、彼らのベトナム戦争の反対には共感を持っていた」
映画内ではシャイア・ラブーフ演じるベンが、ウェザー・アンダーグラウンドを調査する記者だが、今日のジャーナリズムについては「アーティストがジャーナリズムに関して不適切な対応をすると、リスクの大きい関係を作り上げてしまう。僕自身もそういった体験があるし、ジャーナリストにとっては同業者でないものから批判されるのも嫌だろう。ただ個人的に、社会に重要な役割を果たすメディアに対しては興味があって、それに脅威を感じるし、実際にそう感じたら、それがどうして、どのように脅威を感じたかを知りたいとも思っている。さらにインターネットが今日のジャーナリズムを変革させたが、情報がありすぎて、その中でどうやって真実を見つけ出すか考えさせられることもある」
最後に、レッドフォード監督はジム役を「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャン、記者役ベンをジャベール警部と比較していた。映画は、大切な子どもを守るために全てを捨てて真実を明るみに出そうとする主人公が魅力的な映画に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)