スマトラ島沖地震に被災…奇跡的に家族と再会!モデル女性が映画化の意義を語る
2004年のスマトラ島沖地震とその後の津波に遭遇した家族の実話を描いた映画『インポッシブル』の公開に併せて、主人公のモデルとなったマリア・ベロンさんが来日し、自らの被災体験、そしてそれを映画化することの意義について語った。この日はジャーナリストの大谷昭宏氏、前宮城県知事の浅野史郎氏、日本赤十字医療センターの槙島敏治氏も同席した。
マリアさん家族5人は、クリスマス休暇で訪れたタイのプーケットで被災。津波により家族は互いの消息もわからず散り散りとなったが、死者22万人とも伝えられる大災害の中、奇跡的な再会を果たした。「バカンスで訪れ、誰も助けることができなかった自分たちがなぜ生き残ったのか。そんなことばかり考えて、罪悪感からずっと何も話すことができなかった」というマリアさんだったが、「3年たったある日、ラジオで経験を話す機会を与えられ、心が少し楽になった」と明かし、それが映画に協力したきっかけになったという。
フアン・アントニオ・バヨナ監督、脚本家のセルヒオ・G・サンチェス、そして主演のナオミ・ワッツと何度も話し合い、自身の経験を説明した。「『なぜ、わたしたちだったのか?』とつい考えてしまう。でも息子のサイモンに『そんなバカなこと、ずっと考えているんだね?』と言われて、ハッとしたんです。答えの出ない問いより、生きている自分にできることをしようと思ったんです」とマリアさん。監督には映画にあたり「被災した人の痛みと、それでも生きているという人の強さを描いてください」とお願いした。
劇中の津波の描写の生々しさから、一時は公開が危ぶまれた経緯があった本作。そのことについて、マリアさんは「そういう話も聞いているが、わたしは人間の知恵というものを信じている。この映画を観る観ないはその人の判断だし、途中で席を立つ権利も観客にある。ただ、あの映像は言葉では説明できない、わたしが水の中で実際に体験したことだし、わたしを越えて、あの日亡くなられた人たちの、表すことのできない気持ちであるとも思っている」とコメント。「監督や役者、スタッフの方々には、尊敬の思いでいっぱい」と関係者に感謝を語っていた。(取材/岸田智)
映画『インポッシブル』は6月14日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開