トニー・レオンも出席!暴力と貧困を描くジャ・ジャンクー最新作がカンヌ公式上映!
第66回カンヌ国際映画祭
ジャ・ジャンクー監督の新作映画『ア・タッチ・オブ・シン(英題) / A TOUCH OF SIN』が現地時間17日、第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で公式上映された。レッドカーペットには、ジャンクー監督をはじめとするスタッフ、キャストたちはもちろんのこと、ゲストとしてトニー・レオンも登場、アジアのスターが集結する華やかな一夜となった。
同作は、中国で実際に起こった四つの事件を基にしたオムニバスストーリー。先に行われた会見で、「一人の人間に焦点を合わせたストーリーにはあまり興味がない」と話したジャンクー監督の言葉通り、同作では物語の主人公が次々と切り替わっていき、それぞれの主人公役を務めた役者たちの熱演が、カンヌの観客を引き込んだ。
上映中、暴力シーンでは劇場内に悲鳴が響き、正義が通らない現実への怒りから引き金を引く主人公の姿には喝采が起きるなど、観客のリアクションは上々。中でも最終章で描かれた、ある若者が衝撃的な選択をする場面では、観客の息をのむ音が聞こえてくるほどだった。深夜1時までの上映だったにもかかわらず、終映後は長いスタンディングオベーションが送られ、ジャンクー監督の真後ろに座っていたトニーも立ち上がって作品をたたえた。
暴力の裏側には、貧困がある。経済成長が著しい中国では、貧富の差が広がるにつれ、本作で描かれたような事件が増えているのだという。その上でジャンクー監督は、劇中で描かれる暴力シーンについて「暴力というのはスクリーンで見て、(観客が)そのことについてきちんと話し合うことで何かが生まれると思っています。だからこそ暴力を描きたいと思いました」と語った。
観客に感想を聞いてみると「正直ハリウッド映画のように銃がぶっ放されるので、最初はエンターテインメント作品に思えた。でも、登場人物がみんな貧しくて、彼らのバックグラウンドを思うと、やるせなさを感じました」という答えが返ってきた。ジャンクー監督はカンヌの場で、中国のみならず世界が抱える「経済と貧困」の問題を、映画を通して改めて投げ掛けた。(編集部・森田真帆)
第66回カンヌ国際映画祭は5月26日まで開催