ネタバレはありか、なしか? 真木よう子『さよなら渓谷』で激論
5日、シネマート六本木で行われた映画『さよなら渓谷』男女ペア限定試写会で、宣伝にネタバレを投入することの是非について話し合われた。イベントには、主演・真木よう子の夫役を務めた大西信満、大森立嗣監督、高橋樹里プロデューサーが来場した。
映画『悪人』『横道世之介』などの原作者としても知られる芥川賞作家・吉田修一の同名小説を、大森監督が真木をヒロインに迎え、大西、鈴木杏、大森南朋らで映画化した本作。この日は、観客の男性から「僕は原作を読んでいるのですが、最初にこの映画の公式サイトを見たときに、キャッチコピーがネタバレではないかと思ったのですが」と疑問が投げ掛けられたことをきっかけに「映画のネタバレを宣伝に使うことの是非」をめぐって、意見が交わされた。
男性客の指摘通り、本作の公式サイトには「残酷な事件の被害者と加害者。15年の時を経て、ふたりは夫婦となった」とのキャッチコピーが掲載されている。高橋プロデューサーは「ぶっちゃけて話しますと、本編はもちろんサスペンスとして作っていますが、宣伝としては(むしろその関係性を積極的に)出していこうということになったんです。なぜかというと、わたしたちが一番見せたいところは、なぜこの二人が一緒にいるのか、そして、かなこ(真木)の心が揺らぐところだからです」と意図を説明。
大森監督は宣伝方法について、「そりゃ本当は作り手としてネタバレはイヤですよ。でも、映画の情報に積極的に触れていない観客にとっては『さよなら渓谷』と言われても何の映画かわからない。何の映画がわからないとお客さんは観に来ないんですよ。ネタバレはイヤだけど、お客さんが入らないのはもっとイヤですからね」と複雑な心境を隠さない。
一方の大西は「ミステリー的な部分で答えがわかっていても、なぜ二人が一緒に暮らしているのかといった部分に興味が湧くと思う。だからこういう宣伝のやり方もありだと思う」とコメント。今回の方法がどのような影響をもたらすのか。今後の宣伝展開の行方にも期待したい。(取材・文:壬生智裕)
映画『さよなら渓谷』は6月22日より全国公開