アニメーションだからこその自由!ピクサー監督が明かす“映画の魔法”
ディズニー / ピクサーの映画『モンスターズ・ユニバーシティ』と同時上映されている短編映画『ブルー・アンブレラ』のサシュカ・ウンゼルト監督が、アニメーションの可能性を語った。「僕が幼かった頃、映画を観るというのはいつも魔法のような経験だった。本当は存在しないものがスクリーンには映されていたんだからね」というウンゼルト監督は、そうした魔法をこの作品で表現しようとしたのだと明かす。
同作は、都会で偶然出会った傘同士のラブストーリー。だが、何よりも目を引くのはその超写実的な作風だ。描かれる街並みはアニメーションでありながら実写と見まがうほどリアルであり、そのアニメーションは史上最も実写に近いアニメーションといっても過言ではない。そのようにリアルに描かれた街が擬人化され、躍動するさまはアニメーションならではの楽しみに満ちている。
ウンゼルト監督いわく、その作風はストーリー上の必然によって導かれたものだという。「無機物であるはずの街に命を吹き込むことで、僕が子どもの頃に触れた“映画の魔法”を観客に感じてほしいと思ったんだ。でも、もしも街が『いかにもアニメです』というふうに描かれていたら、観客は『きっと何かが起こる』と予想するだろう。だからこそ、徹底的にリアルに街を描く必要があったんだ」。
だがその一方で、舞台となる街は、サンフランシスコやニューヨーク、さらには監督の生まれ故郷であるドイツ・ハンブルクをごちゃ混ぜにした架空のもの。リアルな描写を追求しながらも架空の街を舞台するという矛盾について、監督は「ストーリーを展開させるためには、どうしても『ここに角がないといけない』というような注文がいくつもあったからだよ。でも、その全ての条件を満たした街を見つけることは不可能だった。だから、自分たちで作ることにしたんだ」と笑う。
「僕はアニメーションが好きだ。そこには何の制限もなくて、何でもできる。それは言ってみれば、アニメーション自体が魔法のようなものだからだ。例えば、この作品を実写でやろうとしたら、完璧な街角や道路、数百台の車、何千人ものエキストラが必要だ。でも、アニメなら実写よりもずっと簡単にできる。まるで魔法でカボチャの馬車を出すみたいにね」と語ったウンゼルト監督。その口ぶりからは、誰よりも監督自身がアニメーションの可能性を信じていることがうかがえた。(編集部・福田麗)
映画『モンスターズ・ユニバーシティ』は公開中 同時上映『ブルー・アンブレラ』