妥協なき演出!『許されざる者』李相日監督が語る、映画作りへのこだわり
第65回アカデミー賞で作品賞をはじめ4冠に輝いたクリント・イーストウッド監督・主演の同名作に、渡辺謙主演で新たな息吹を吹き込んだ最新作『許されざる者』の監督を務めた李相日が、映画作りへのこだわりを語った。
出演者たちが「精神的にどんどん追い込まれていく」と口をそろえるほどの粘り強い演出で知られている李監督。北海道で敢行した本作のロケは、常に天候との闘いだった。撮影中は、役者もスタッフも何時間も天気待ちをしていたという。なぜ妥協がないのか? 李監督は「確かに、とても過酷な状況なので、このまま撮ってしまおうというふうになってしまいがちです。でもそうすると結局、編集をするときに後悔することになる。そんなことで映画の質が下がってしまうのは非常に屈辱的なんです」と語る。
李監督は、予告編の中にも登場する一軒の家屋が雪の中で業火に包まれるシーンの撮影が今も目に焼き付いているという。「建物を燃やす準備もできて、カメラで撮影する準備もできていた。でも、どうしても吹雪が欲しかった」とひたすら吹雪を待ち続けた。いてつくような寒さの中、監督の気持ちを支えたのは、キャストやスタッフたちの辛抱強さだった。「本当に寒かったけれど、そんな長い待ち時間でも、集中力を切らさずに待ってくださった俳優やスタッフに助けられました」。
『フラガール』『悪人』など、李監督の作品にみなぎるエネルギーは、常に観客の心を揺さぶってきた。自身の映画作りの姿勢について「自分のやれることを最大限やらなければ、人の心に届く作品はできないと思っています」と語った李監督が、スタッフやキャストたちと執念で作り上げた本作。映画に懸けた熱い思いを、スクリーンから感じ取ってもらいたい。(編集部・森田真帆)
映画『許されざる者』は、9月13日より全国公開