鈴木敏夫プロデューサー、盟友・宮崎駿の幕引きを称える…引退の裏側を明かす
現在公開中の映画『風立ちぬ』を最後に長編からの引退を表明した宮崎駿監督が6日に都内で会見を行い、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが35年来のパートナーである宮崎監督への思いを語った。鈴木プロデューサーと宮崎監督は、鈴木が「アニメージュ」編集部にいたころからの付き合い。その間に宮崎監督が引退をほのめかしたことは一度や二度のことではなかったというが、今回の引退宣言は鈴木プロデューサーにも何か感じるものがあった。
宮崎監督については「死ぬまで映画を作り続けるだろう」と思う一方で、「別のことをやろうとしたときには自分でそれを決めて、他人に宣言する人」だと思っていたという鈴木プロデューサー。だからこそ、『風立ちぬ』が完成した後に宮崎監督が引退の話を切り出してきたときは「僕の予想の中に入っていましたので、僕は素直に受け止めることができた」と振り返る。
「『ナウシカ』の連載開始から数えると今年がちょうど30年目にあたるんですけれども、それまで30年間ずっと、緊張の糸というのはあったと思うんですね。その緊張の糸が、宮さん(宮崎)にそういうこと(引退)を言われたときに揺れたんですよ。僕自身が変な言い方ですけど、ほっとするところがあったんです。僕が若いときだったらそれを止めさせようという気持ちも働いたと思うんですけど、自分の気持ちの中で本当に『ご苦労様でした』という気分が湧いた」。
そして、一度「引退」が決まってしまえば、鈴木プロデューサーが全ての段取りを整えた。まずはいつ、誰に、どこで発表するのか。ちょうど『風立ちぬ』の公開が迫っていたこともあり、鈴木プロデューサーは混乱を最小限にするため、スタッフには8月5日に、マスコミには公開が一段落した9月に発表することに決定した。それも全ては苦楽を共にした宮崎監督のことを慮ってのことだろう。
会見の冒頭、鈴木は宮崎監督の引退について「始まったものは必ず終わりが来る。そういうものだと思います」と淡々とコメント。だが、それに続けて「僕の立場で言うと、落ちぶれて引退するのはかっこ悪いと思っていましたので、ちょうど今、『風立ちぬ』っていう映画が公開されていて、いろんな人に支持されているときに、こういうことを決めた。これは良かったんじゃないかと思っています」と思い入れたっぷりに語り、盟友・宮崎駿の見事な幕引きを称えていた。(編集部・福田麗)