トロント国際映画祭最高賞を獲得したオスカー候補の話題作とは?
今年のトロント国際映画祭の観客賞を受賞したオスカー有力候補の話題作『12 イヤーズ・ア・スレイヴ(原題) / 12 Years A Slave』について、キウェテル・イジョフォーとマイケル・ファスベンダーが語った。
マックィーン監督とファスベンダーのタッグ作!映画『SHAME -シェイム-』場面写真
同作は、1841年に誘拐され奴隷としてルイジアナ州の農場主エドウィン(マイケル・ファスベンダー)に売られた黒人ソロモンが、自由を獲得していくまでの12年間を描いた実話を基にしたもの。ソロモン・ノースアップの伝記本を、映画『SHAME -シェイム-』のスティーヴ・マックィーン監督が映画化した。
ソロモン・ノースアップについてキウェテルは「彼の伝記本を読んでみると、奴隷時代にさまざまな暴力を振るわれたにもかかわらず、(それを感じさせないほどの)素晴らしい世界観を持っていることに驚いた。そして、ソロモンの揺るがない精神や深い愛情、彼の魂にも原作を通して触れた気がした。彼は黒人奴隷として自由を求め戦っているが、最終的には生き残るために自分の心とも戦っていることにも気付かされた」と答えた。
『SHAME-シェイム』のスティーヴ監督との再タッグについてマイケルは「俳優によってはある程度の映画作品に出演すると、(原作と脚本だけで準備するような)形式張った演技のアプローチをするが、そんな形式張った演技を崩して演出をしようとするのがスティーヴ監督なんだ。彼は安全策を取らずに、俳優たちには演技で失敗することさえも勧めている。そのため、自分の本能で演じることができるんだ」と語り、本作ではそんな感情むき出しのマイケルが鑑賞できる。
奴隷時代の厳しさを肌で感じたシーンについてキウェテルは「それはソロモンが白人数人にリンチされ、足が地についてはいるが、首にヒモをかけられて木につるされているシーンだ。原作では、『もし白人が僕(ソロモン)を木陰につるしていたら、その後も僕は奴隷をしていただろう』と語っていて、(実際には厳しい日差しの場所でつるされていたために喉が渇いた状態にさせられ、その反骨精神から自由を求めていく)その言葉に惹(ひ)かれたんだ。だから、このシーンを演じるうえで、原作から何かを感じ取って、彼が実際に体験したような演技をしたかった」と答えた通り、胸が締め付けられるようなシーンを演じきった。
映画は、不屈の精神で困難を乗り越えるソロモン役キウェテルと、冷酷な白人農場主エドウィン役マイケルの演技が観るものの目をとらえて離さない。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)