911で従業員658人を失った米証券会社キャンター・フィッツジェラルドの再建を描いたドキュメンタリー
2001年9月11日の米同時多発テロ後の、米証券会社キャンター・フィッツジェラルドの再建に焦点を当てた話題の新作『アウト・オブ・ザ・クリア・ブルー・スカイ(原題) / Out of the Clear Blue Sky』について、ダニエル・ガードナー監督が語った。
同作は、米同時多発テロで従業員960人のうち、658人を失った米証券会社キャンター・フィッツジェラルドのCEOハワード・ラトニック氏と仲間が取り組んだ会社の再建と遺族の支援を描いた感動のドキュメンタリー。
製作経緯について「米同時多発テロが起きた後、二つの観点に分かれたと思う。一つは家族などが犠牲者になった人たちの観点、もう一つは世間一般の観点。これまでドキュメンタリー映画を描いてきたわたしは、キャンター・フィッツジェラルドで働いていた兄を米同時多発テロで亡くして、彼と同じキャンター・フィッツジェラルドで働いていた仲間や家族を失った人たちの観点から描きたいと思ったの」と答えた。
今作を監督として、また犠牲者の家族としての立場で描いたことについて「もちろん、犠牲者の家族でなければこの映画は描かなかった。監督としては、今作を製作することで、兄を失った後に、犠牲者の家族や兄の仲間たちと話してみて、ある意味セラピーを受けているような感じで、心を癒やしながら製作していた。でも、今でも大きな苦痛を与えられた感じは、ぬぐい去ることができないわ」と明かした。
試写での犠牲者の家族の反応について「CEOのハワードが米同時多発テロの後に、再建のめどが立っていない状態で、すぐに犠牲者の家族に支援することを語り、(すぐに支援ができなかったために)彼をかなり批判していた犠牲者の家族が、この映画を鑑賞して、そのように思ったことを謝りたいと言ってきたのには驚いたわ」と語った。ちなみに、その後ラトニック氏は、5年間の同会社の利益の25%、10年間の医療保険を社員の遺族に提供し、さらに彼が設立したキャンター・フィッツジェラルド・リリーフ・ファンドを通して、およそ180億円を社員の遺族に提供した。
映画は、キャンター・フィッツジェラルドの奇跡の再建過程と、犠牲者の家族が10年以上たった今も抱える米同時多発テロに対する思いが克明に描かれている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)