トム・ハンクス3度目のオスカー受賞なるか?ソマリアで海賊に襲撃された貨物船の船長を描いた映画とは?-ニューヨーク映画祭
第51回ニューヨーク映画祭(N.Y.F.F'51)のオープニング作品『キャプテン・フィリップス』について、主演トム・ハンクス、共演者バークハッド・アブディ、ポール・グリーングラス監督が語った。
同作は、アフリカのソマリア沖で、海賊たちに襲撃された貨物船の船長リチャード・フィリップス(トム・ハンクス)とクルーは、米海軍特殊部隊シールズの救出を待つが、船内を海賊に乗っ取られ拘束されてしまい、窮地に追い込まれていくというもの。2009年4月に実際に起きた事件を、映画『グリーン・ゾーン』のポール・グリーングラス監督が映画化した。
今作が初の映画出演となる海賊のリーダー、ムセ役を演じたバークハッドは「ポール・グリーングラス監督を含めたスタッフが、僕が演じやすい環境を作ってくれた。だから、ぼくは実在したこのムサをリアルに演じるだけだった。出来上がった映画に満足している」と語る通り、彼の迫力ある演技が最後まで今作に緊張感を持たせている。
フィリップス船長役を、船長本人に忠実に演じたことについてトムは「この映画の脚本を読む前に、フィリップス船長が書いた自叙伝を読み、彼とも2度会うことができた。船長が言った言葉や通った場所を再現するわけだから、それを明確にするためには、この事件がどのようにして起きたかを、彼から直接説明してもらわなければいけなかった。その結果、実際に撮影した貨物船も、フィリップス船長らが乗っていたマークス・アラバマ号と似たものとなり、さらに貨物船の乗組員や海賊の動作や振る舞いも実際に起きた事件により近いものになっている」と語った。
困難と思われた猛スピードの海賊ボートの撮影についてポール監督は「ぼくがカメラのクルーたちとボートに乗っていた時、別のボートで撮影していたクルーが携帯型無線機で『問題が生じた』と言ってきた。トムが居たボートに乗り合わせていたフォーカスプラー(カメラのピントを合わせる人)が気持ち悪くなり、トムの前で吐いてしまったらしいんだ。そんなフォーカスプラーが乗り合わせていたボートで、唯一船酔いしなかったのがトムだったよ」とハプニングがあったことを明かした。
映画は、拘束された貨物船の乗組員と海賊たちの間で緊張感ある攻防が繰り広げられ、2時間以上の作品であるにもかかわらず、全く長尺を感じさせない秀作に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)