劇を映画で観ることの醍醐味とは?ゲキ×シネの魅力!
昨今、「ライブ・ビューイング」と呼ばれる映画館の使用方法が広がっている。その先駆、「ゲキ×シネ」の仕掛人・金沢尚信プロデューサーに、劇を映画で観ることの醍醐味とは何か、「ゲキ×シネ」の魅力を伺った。
ゲキ×シネは、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」にも出演し、いまやお茶の間の顔となっている古田新太が看板俳優を務める「劇団☆新感線」の舞台を映像として収め、映画館で公開したもの。経理畑にいたという金沢プロデューサーが劇団☆新感線の舞台を映画館で上映したら面白いのではないか? と発案した。そのため、ゲキ×シネは舞台がベース。過去10作品の累計観客動員数が約40万人に上る人気コンテンツとなった今でも、生の舞台をそのまま撮影するスタイルを続けている。
そこには「舞台の醍醐味(だいごみ)を生の舞台そのまま、いやそれ以上の臨場感で多くの人に客席で同時体験してほしい」というスタッフの思いが込められている。また、劇場の最前列で観ていても決して見えないような役者のしぐさ、表情、一滴の汗までを堪能できるのも、ゲキ×シネの魅力。しかしそれは同時に欠点でもあり、例えば冷徹な男を演じているはずの役者の汗が見えてしまい、キャラクターに人間味が出てしまう。
「黒澤明監督やスティーヴン・スピルバーグ監督の1960年代、1970年代の映画には、いい意味の荒々しさがあったと思うんですよね。それは今観ると、作り方が荒いなあなんて思ってしまうものかもしれないんだけど、やっぱり何か引き込まれる要素があるじゃないですか。あれは何だろうなと思うんだけど、今って映像とか音が緻密になりすぎているんじゃないかなって」と語る金沢プロデューサー。確かに、ゲキ×シネには冷徹な男の人間味が見えてしまっても、いいと思える何かがある。
最新作「シレンとラギ」は、藤原竜也と永作博美の共演も話題になった作品。日本の歴史で唯一皇室が南北二つに分裂した南北朝時代をモチーフに、かつて南の王を暗殺した伝説の女シレン(永作)と、北の重臣キョウゴクの息子ラギ(藤原)の悲しき恋路を描く。神話や史実、古今東西の名作モチーフに、独自の世界観を築き上げてきた劇団☆新感線、そしてゲキ×シネの魅力を堪能するのにぴったりの作品だ。ゲキ×シネ史上初となるハリウッド仕込みの音響技術にも注目してほしい。(編集部・島村幸恵)
ゲキ×シネ「シレンとラギ」は10月5日より全国公開