ホアキン・フェニックス、移民を描いた新作の記者会見でほとんど何も語らず
第51回ニューヨーク映画祭(N.Y.F.F'51)で、映画『ザ・マスター』のホアキン・フェニックスが、新作『ジ・イミグラント(原題) / The Immigrant』の記者会見にジェームズ・グレイ監督と共に登場した。
ホアキン主演映画『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』写真ギャラリー
同作は、1921年にアメリカに渡ってきたポーランド移民の2人姉妹の姉エバ(マリオン・コティヤール)が、結核にかかった妹の薬代を稼ぐためバーレスクのダンサーになるも、売春をあっせんする経営者ブルーノ(ホアキン・フェニックス)に戸惑い始めるという内容。映画『アンダーカヴァー』のジェームズ・グレイがメガホンを取った。
女性を主役にしたことについて、ジェームズ監督は「作曲家プッチーニのオペラ三部作の中に『修道女アンジェリカ』という作品があり、その女性の観点で描かれた60分間のオペラを観て号泣したんだ。その際にメロドラマを女性の観点から描く美しさを知り、これまで僕が描いてきたマッチョな男性とはかけ離れた、ストレートな感情が描けると思ったのが女性を主役にするきっかけになった」と語る通り、映画内では主役エバの複雑な感情を鮮明に描いている。
祖父母のアメリカ移住も作品に影響しているいうジェームズ監督は、「(映画内で)エバがバナナを皮のままかんだのは、実際に僕の祖父母が経験したことだ。ただ、この映画では、これまで描かれてきた典型的な移民を描いてはいない。僕の祖父母も亡くなるまでほとんど英語が話せず、特に祖父は母国が懐かしいと語っていて、移住することがかなり複雑であったことを今作で描きたかった」と語った。
ジェームズ監督と4度目のタッグとなったホアキンは、今作と過去作との相違点について聞かれると、「僕は毎作違うアプローチをするから相違点を挙げられない」と質問を投げ出してしまい、ジェームズ監督は「前回僕らがタッグを組んだときと比べて、彼は素晴らしい俳優になった。僕が前回ホアキンと仕事をした際には結果を恐れずに、撮影過程を楽しむことを教わった。特にナルシストの傾向になりやすい監督という立場では、それが重要だと思った」とホアキンをフォローしていた。
記者会見中は、記者と司会者の質問にほとんど答えなかったホアキンだが、映画では、ゆがんだ心を持ちながらもエバを愛するブルーノを見事に演じている。(取材・文・細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)