ジム・ジャームッシュ監督が手掛けた新作ヴァンパイア映画
第51回ニューヨーク映画祭(N.Y.F.F'51)で、映画『デッドマン』、『ゴースト・ドッグ』などでおなじみのジム・ジャームッシュ監督が、新作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ / Only Lovers Left Alive』について語った。
ジャームッシュ監督の前作『リミッツ・オブ・コントロール』写真ギャラリー
同作は、何世紀にもわたり生き続けてきたデトロイトの吸血鬼で、ミュージシャンのアダム(トム・ヒドルストン)と、モロッコに住む同じく吸血鬼の恋人イヴ(ティルダ・スウィントン)が繰り広げる愛と葛藤を描いたもの。さらにジョン・ハート、ミア・ワシコウスカらが脇を固め、7年間も企画を暖めてきたジム・ジャームッシュがメガホンを取った。
デトロイトとモロッコのタンジールでの撮影について「7年前に書いた脚本とはロケーションが異なっていて、最初の脚本ではローマとデトロイトだった。タンジールは僕の好きな都市の一つで、単にそこで撮影がしたかったことと、どこか不思議な空間がイヴを惹(ひ)き付けると思ったんだ。タンジールは、ヨーロッパの文化とも離れ、キリスト文化でもなく、アルコール文化でもないが、ハシシの文化ではある(笑)。デトロイトは、オハイオ出身の僕にとって神秘的でワイルドなイメージがあり、さらに産業的にも音楽的にも興味があったからだ」と答えた。
ヴァンパイアを描いたことについて「ヴァンパイアを描いているが、明らかにホラーではなく、ヴァンパイアとして長年の愛を共有している設定だ。そしてそのヴァンパイアの性格を観察し、彼らの観点と歴史をひも解いている。それに彼らヴァンパイアは、ゾンビのように死から生き返るわけではなく、どこか人間らしいところが僕には興味があった」と語った。
撮影監督ヨリック・ル・ソーとのタッグは「ティルダは、これまでヨリックとタッグを組んだことがあったが、僕はなかった。今回、ヨーロッパの撮影はスタッフもヨーロッパ人で、ティルダの勧めでヨリックを紹介され、彼との会合で心地よく話せたことや、ヨリックと共に仕事をしたオリヴィエ・アサイヤス監督からの話も聞いて決定した。彼の撮影アプローチは、これまで僕が仕事をしてきた撮影監督ロビュー・ミューラーに似ている」と映像には満足しているようだ。
映画は、ジャームッシュ監督の独自のヴァンパイアの世界が描かれ、観客もいつの間にか彼のスタイルに引き込まれていく作品に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)