ジョン・レノン&オノ・ヨーコ監督作上映 主演女優の衝撃的な最期に観客あぜん…
開催中の第13回 山形国際ドキュメンタリー映画祭で13日、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが監督を務めた映画『レイプ』(1969)が上映された。オノ監督は多忙のため現地入りできなかったが、米ミシガン大学教授の阿部マーク・ノーネス氏が撮影裏話とその後を明かした。
同作品は、カメラが街を歩いていた美女をただひたすら追いかけ回す78分の実験映画だ。その攻撃的な内容はカメラの暴力性を表現したものといわれており、山形でも映画の倫理性を考える特集プログラムの1本として上映された。
2002年のウィーン国際映画祭では本作を含むオノ・ヨーコ特集が組まれ、オノが記者会見を開催。阿部氏はその席上で製作過程を聞いたという。「当初はゲリラ撮影を試みたがうまくいかず。そこで撮影スタッフと話し合い、知人の妹を紹介してもらい、アパートの鍵も預かったことで室内までの密着撮影に成功。ただし妹には翌日、オノさんとジョンが直接アパートを訪ねてネタばらしをしたそうです」。
そのウィーンでは、映画祭スタッフによるサプライズがあったという。密着された元モデルのエヴァ・マイラートさんが記者席に紛れ込んでいたのだ。オノとエヴァさんは撮影から実に33年ぶりの再会を果たした。阿部氏は「そのとき、エヴァさんが『わたし、まだギャラをもらっていません』と発言し、オノさんを慌てさせましたが」と笑顔で振り返る。
ただしエヴァさんは、この後、母国ハンガリーに戻り動物保護活動に従事していたところ、2008年に施設の管理人に撲殺された上、遺体は焼かれた。いまだ遺体の一部は不明のままだという。とても一人の犯行とは思えぬ暴行の跡に不審を抱いた遺族の要望で、今月、捜査報告書が公表されたばかりだ。この、阿部氏による映画以上の衝撃的な話に、会場にいた観客はただあぜんとなった。なお、エヴァさんの実姉ジュディス・マイラートさんは、対人地雷全面禁止運動で1997年にノーベル平和賞を受賞したうちの一人である。(取材・文:中山治美)
山形国際ドキュメンタリー映画祭は10月17日まで開催