映画『Z』の巨匠、コスタ=ガヴラスを直撃、彼が描いた究極キャピタリズムの映画とは?
映画『Z』『ミッシング』でおなじみの社会派監督、コンスタンタン・コスタ=ガヴラスが、新作『キャピタル(英題) / Capital』について語った。
コンスタンタン・コスタ=ガヴラス出演映画『メリエスの素晴らしき映画魔術』場面写真
同作は、フランスの大手銀行フェニックスの社長秘書マルク(ガド・エルマレ)は、ある日社長が心臓発作を起こし倒れたことで、後任として社長を任され、社内に派閥を持たないマルクは重役たちに最初は利用されていたが、アメリカのヘッジファンドのディトマーとの関係を通して会社に変化をもたらしていくという政治ドラマ。コスタ=ガヴラスの4年ぶりの新作。
ステファン・オズモントの原作との違いは「小説内で主人公が、これからなろうとしている社長業に準備ができていない点が気に入ったが、映画内でマルクが社長に上り詰める過程は、小説と僕らの書いた脚本では少し違う。40代でトップに立ったことで、ほとんど未経験な主人公がさまざまな問題や不正に直面するところが面白い。マルクは、ある程度は僕ら脚本家3人のクリエーションでもあり、小説とは違う。ただ、僕はリーマンブラザーズの破綻で誰も刑務所に入っていないような現実を、今作では描きたかった」と答えた。
フランスでコメディー俳優として知られるガド・エルマレを主役に抜てきしたのは「僕は彼のコメディー作品やワンマンショーを観たことがある。彼はワンマンショーで、警官や聖職者などさまざまなキャラクターを数分ずつ演じていて、それらの全てがリアルだった。そんな理由から彼にこの役を依頼したが、彼は最初はためらっていた。だが、僕と二人でマルクというキャラクターを共に作り上げていこうと説得したことで参加してくれた」と語った。これまでとは異なったガド・エルマレの演技に注目だ。
映画内では、マルクが親族に批判されるシーンがある。「このシーンは原作にもない。マルクの親族はシンプルで、特に高学歴ではない。ただ、僕は会社とは違った社会(親族)を通してマルクの価値観を描きたかった。親族は左翼(社会主義的)で、資本主義の価値観を持つマルクとぶつかり合うが、それでもマルクは自分が行っていることが多くの人を救っていると思っていて、それを観客に見せることが、このシーンでは重要だった」と明かした。
映画は、住年のコスタ=ガヴラス監督の秀作をほうふつさせ、資本主義の中で生きる社長の思惑と価値観が現実的に描かれている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)