“映画大好き”アニエスベー、初監督作のきっかけを明かす
30日、ファッションデザイナーのアニエスベーことアニエス・トゥルブレの長編監督デビュー作の映画『わたしの名前は…』が有楽町朝日ホールで開催中の「第14回東京フィルメックス」の特別招待作品として上映され、アニエスがQ&Aイベントに登壇した。
上映後に登場したアニエスは「皆さんにとってはアニエスベーという名前の方がなじみ深いかもしれませんが、わたしはファッション以外の表現方法を使う際には、アニエス・トゥルブレという本名を使わせてもらっているんです」とあいさつ。さらに手に持っていたバッグを観客の前に見せると、「これは(アニエスが彼の映画の製作を務めるなど)仲良しのハーモニー・コリンが2年前のクリスマスにプレゼントしてくれたバッグなんです。中身にいっぱいプレゼントが詰め込んでくれた思い出の品なので、ぜひ皆さんにお見せしたいなと思い、持ってきました」と笑顔を見せた。
本作は、父が犯した不幸な出来事のために心に傷を負った11歳の少女が家出願望を抱くようになり、スコットランド人のトラック運転手と一緒に旅を始めるも、それが世論を巻き込んだ騒動を呼んでしまう……という物語。アニエスによると、この物語は10年前にル・モンド紙で本作のクライマックスの内容に即した事件の記事を読んだ時に思いついたとのこと。
「わたしの物語を描きたいという衝動が生まれたんです。それから2日間で一気に書き上げました。これは本当にマジカルな体験でした」と振り返る。本作にはソニック・ユースが未発表曲を1曲提供したほか、アニエスと親交のある伝説的な映像作家ジョナス・メカスが夜の焚き火のシーンを即興的な長回しで撮影したことも注目のポイントだ。
また、本作ではストップモーションや、異なったスクリーンサイズを混在させるなど、映像上の遊びがふんだんに織り込まれているが、それについては「わたしはもともと写真に興味があって、構図を決めるのがとても好きなんです。コントラストを際立たせたりする作業はワクワクしましたね」とコメント。さらに本作の旅の途中で、白塗りの日本人舞踏家が登場することについては「今回、舞踏家を劇中に組み込んだのは皆さんへのオマージュという意味合いがあります。ますます日本を愛し、賛美する気持ちが増してきました」と明かした。(取材・文:壬生智裕)
第14回東京フィルメックスは12月1日まで有楽町朝日ホールほかにて開催中