『ビフォア・サンライズ』はリンクレイター監督の恋愛体験!? セリーヌ役にはモデルがいた
偶然出会った男女が意気投合し、翌朝の別れまで街を歩きながら語り合う姿を描いた映画『恋人までの距離(ディスタンス)』(原題:ビフォア・サンライズ)のリチャード・リンクレイター監督が、同作は自身の実体験に基づいており、ジュリー・デルピー演じるセリーヌ役にはモデルがいたことを電話インタビューで明かした。
「僕の映画の多くは実体験からインスピレーションを得ている」と言うリンクレイター監督は、「『恋人までの距離(ディスタンス)』においては1989年の一夜が助けになった。僕はその夜のこと、その夜がどんなだったかを知っているから」と29歳当時にフィラデルフィアで出会った女性に言及。二人は映画のジェシーとセリーヌさながら「真夜中から朝の6時まで、歩き回ったり、いちゃついたり、今の世の中では絶対にしないようなこと」をして過ごしたという。
ジェシーとセリーヌは電話番号を交換せずに、半年後に同じ場所で再会すること約束するが、「実際の僕たちは電話番号を交換した(笑)」とのこと。しかし「何度か電話はしたんだけど、遠距離で関係を維持するのはとても難しいから」と自然消滅してしまったことが、「ジェシーとセリーヌは半年後の再会を果たせない」という物語につながったと打ち明けた。
彼女は自分がモデルになったことを知っているのかどうかについては、「それこそがあの夜、僕らが何度も話したことなんだ。『僕はこの夜を映画にする』って話したんだよ」と若き日を懐かしむように語ったリンクレイター監督。シリーズ第2作『ビフォア・サンセット』で作家になったジェシーは、“あの夜”のことを書いた新作のプロモーションで訪れたパリで9年ぶりにセリーヌと再会を果たすが、リンクレイター監督も『恋人までの距離(ディスタンス)』の上映会にその女性が現れるのではないかと考えていたという。
しかしシリーズ第3作『ビフォア・ミッドナイト』(2013)まで18年にわたる関係を築いたジェシーとセリーヌとは違い、リンクレイター監督がその女性と再会することは早い段階で不可能になっていた。「数年前に彼女の友人から手紙が来て、彼女がバイク事故で亡くなっていたことを知った。事故は『恋人までの距離(ディスタンス)』の撮影前に起きたんだよ。本当に悲しい話だ。だから『ビフォア・ミッドナイト』は彼女にささげている。エンドクレジットの最後に彼女の名前を入れたんだよ」。映画の裏に存在したもう一組のカップルに注目すれば、作品をより感慨深く鑑賞できるはずだ。(編集部・市川遥)
映画『ビフォア・ミッドナイト』は2014年1月18日よりBunkamuraル・シネマほか全国公開