舩橋監督が福島第一原子力発電所のある双葉町の人々をニューヨークで言及!
映画『ビッグ・リバー』『谷中暮色』の舩橋淳監督が、アメリカ公開予定のドキュメンタリー作品『フタバから遠く離れて』について語った。
同作は、2011年3月に起きた東日本大震災で被害にあった福島第一原子力発電所のある故郷から町ごと埼玉県の廃校に移住した福島県双葉町の人々を描いたドキュメンタリー作品。
震災後、舩橋監督は国内外の情報にいら立ちを感じていたそうだ。「CNNは3月12日の時点で原子力事故で『炉心溶融』としたが、東電がそれを認めたのは5月で震災から2か月後、さらにCNNは福島の原発事故はINES(国際原子力事象評価尺度)レベル7で、チェルノブイリと同じであると3月18日に言ったが、 日本政府はその発表が4月12日だった。わかっていて言わない状態です。枝野官房長官(当時)も『直ちに健康への被害は出ない』と言って曖昧な発言に終始し、具体的な数字は絶対言わなかった。そんな時に、双葉町の人々が3月末に埼玉に避難したというニュースを聞きました 」と製作のきっかけを明かした。
日本の避難基準について「国際放射線防護委員会(ICRP)の年間被爆許容量は1ミリシーベルト(被爆による生物学的影響の大きさ)で、この1ミリシーベルトまでは被爆しても大丈夫なんです。チェルノブイリの避難基準は5ミリシーベルト、日本は避難基準がなんと20ミリシーベルトで、チェルノブイリの4倍、国際基準の20倍の被爆許容量です。日本がもし、この国際基準にすると福島県の全員が県外に出なければいけなかったことになります。そんな規模で避難させたらパニックになる、避難規模や、後にくる賠償問題を最小限に抑える、などのために、避難基準を上げていたのではないでしょうか? つまり国の予算と経済影響を優先し、人命を軽視しているんです」と答えた。この避難基準の20ミリシーベルトはいまだに同じだ。
海外での評価について「海外の人々からは、『なぜこれほど双葉町の人々が、ほったらかしにされているんだ。日本は福祉国家と思っていたが、外国に対しての情報を隠したり、福島の事故の収束を包括するうえで、国に対しての損害をできるだけ最小化することにフォーカスしていて、人間のケアが後回しにされている』という感想を聞きました。外国の人たちにとって、なかなか信じ難かったみたいです」と述べた。
映画は、原発事故による災害というものが、どれだけ人間的な被害を生み出したかを追求した作品だ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)