ニキ・ラウダ、初めて自分を演じることを許した理由明かす
元F1レーサーのニキ・ラウダが、自身とライバルのジェームス・ハントが頂点を競い合った1976年シーズンを映画化した『ラッシュ/プライドと友情』を観て、ダニエル・ブリュールの演技に脱帽したと明かした。ダニエルはラウダのルックスからアクセントまで完全にコピーしており、同役で英国アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞の助演男優賞にノミネートされていた。
ウィーンを訪れた『フロスト×ニクソン』『クィーン』でアカデミー賞にノミネートされたこともある脚本家のピーター・モーガンから直接ビジョンを聞き、映画化を快諾したというラウダだが、本作以前にあったという数多くの映画化のオファーについては「どれもバカげた内容で、わたしが興味を持つレベルのものは一つもなかった」と真顔でばっさり。そんな辛口のラウダをうならせたのがダニエルの確かな演技力だ。
本作を最初に観たときの感想を問われると「ダニエル・ブリュールがあんなにもうまく自分を演じているのを観るのがおかしかった」とまっ先にダニエルに言及したラウダ。ダニエルは役づくりについて「ニキ本人に手伝ってもらえたのは良かった。どんな質問にも答えてくれたんだ」とコメントしているが、ラウダ自身は「彼に教えたことはほとんどないよ」と否定する。
ラウダはそう考える理由について「ダニエルがわたしのもとに来たから、会って一緒に時間を過ごした。全部で1か月くらいかな。自家用ジェットでブラジルグランプリに連れていって話をしたりもした。だけど彼は何かを教えてもらうためというより、どのようにわたしを演じるかを理解するために、わたしといたんだよ」と説明した。
本作ではラウダが生死をさまよう大けがを負ったドイツ・ニュルブルクでのクラッシュも完全に再現されている。「事故でやけどを負って耳も半分なくなった後は、インタビューを受けても誰も自分の目を見てくれなかった。やけどや耳ばかりジロジロと見てくるから腹が立って途中で席を立つことも結構あった」と当時を振り返ったラウダは、本作を観て初めて、自分のやけどがいかにひどいものだったか、なぜ人がジロジロ見てきたのかを理解したという。「観ていて一番キツかったのは、事故直後の病院のシーン。当時は自分が生きることに必死だったから、妻や周りの人の恐怖に気付けなかった。今になって初めて知って、怖いと思ったよ」と感慨深げに語った。(編集部・市川遥)
映画『ラッシュ/プライドと友情』は公開中