密告した母兄、目の前で公開処刑…宇都宮健児氏も衝撃
公開中の映画『北朝鮮強制収容所に生まれて』のトークイベントが10日、渋谷・ユーロスペースで行われ、先日の東京都知事選に出馬した弁護士・宇都宮健児氏が登壇した。
本作は、北朝鮮の強制収容所で政治犯の息子として生まれ、奇跡的に脱北に成功した青年の壮絶な半生を映し出すドキュメンタリー。幼い頃から強制労働に従事させられ、飢えや看守による暴力、さらには拷問にさらされてきた青年が、痛ましい日々をカメラの前で赤裸々に告白する。監督を務めるのは、ドイツのドキュメンタリー作家マルク・ヴィーゼ。地獄を体験した青年の脳裏に浮かぶ複雑な思いに胸が締め付けられる。
映画の内容に大きな衝撃を受けたという宇都宮氏は、「とくに主人公がお母さんとお兄さんを密告し、自分の見ている前で公開処刑されるシーンですね。こういうことをせざるを得ない環境下に置かれていたことに衝撃を受けました」としみじみと感想を述べると、さらに「この映画の根源には、いかに『人間になっていくか』がテーマとしてあるように思います。家族もそうですね、日々の積み重ねがあって家族になっていくもの」と主人公の置かれた厳しい境遇に思いを寄せた。
また、人権派の弁護士としても著名な宇都宮氏は「人間を尊重し、個人の人権を守ることに重要な価値があることを改めて痛感しました。この映画を観て、ただ単に北朝鮮を批判するのではなく、日本をいま一度振り返り、人権状況について改めて考え、学ぶきっかけにしてほしい」と強調した。(取材・文:坂田正樹)
映画『北朝鮮強制収容所に生まれて』は渋谷・ユーロスペースにて公開中(全国順次公開予定)