蟹江敬三さんの早すぎる死に沈痛…『精霊流し』田中光敏監督「頭の先から足のつま先まで役者」
5日、映画『サクラサク』でメガホンを取った田中光敏監督が、胃がんのため先月30日に亡くなった俳優の蟹江敬三さんをしのんだ。蟹江さんは田中監督の2003年の映画『精霊流し』に出演。最新作の『サクラサク』には蟹江さんの長男である蟹江一平が出演しており、田中監督は「それを見ていて、また蟹江さんと一緒に仕事をしたいなって思っていたんです」と遺憾の意を表していた。
『精霊流し』当時について「昔から大好きな役者さんだったので、直接、僕が電話して出演交渉したんです」と振り返った田中監督。監督自らが直接出演交渉することは、稀なことであるが「どうしても自分の作品に出てほしい」という田中監督の思いに対して、蟹江さんは「ドラマの撮影中で髪の毛が切れないんだよね」と難しい状況であることを説明しつつも、田中監督の熱意に応えるため、髪形を何とかして出演してくれたという。
それまで面識がなかった状況で、いきなりの出演オファーだったが「温かい方なので『どうして俺(に出てほしいの)?』って蟹江さんは聞いてくださってね」と田中監督はしみじみと語ると「頭の先から足のつま先まで役者。『精霊流し』での蟹江さんの演技は本当に素晴らしく、日本映画界にとって、とても惜しい人を亡くしたと思います」と偉大な俳優の早すぎる死を嘆いていた。
くしくも、本日公開の映画『サクラサク』には蟹江さんの長男・蟹江一平が出演している。「ラストシーンにね。お父さんの面影があるんですよね。それを見ていて、また蟹江さんと一緒に仕事をしたいなって思っていたんです。『一平さんは素晴らしい役者になっていくんじゃないかな』って蟹江さんと話をしたかったです。ただただ、ご冥福をお祈りいたします」と田中監督は沈痛な面持ちで語った。(磯部正和)