『それでも夜は明ける』でオスカー受賞のマックィーン監督、“黒人初”と呼ばれることは「無意味」
23日、第86回アカデミー賞で作品賞を含め3冠に輝いた映画『それでも夜は明ける』の舞台あいさつが都内で行われ、エスパス ルイ・ヴィトン東京で行われる個展のため来日中のスティーヴ・マックィーン監督が出席。女優の木村佳乃もゲストとして花束を持って登場した。
木村佳乃がスティーヴ・マックィーン監督にお願い?フォトギャラリー
同作は奴隷制度がはびこっていたアメリカを舞台に、自由の身でありながら拉致され、南部の綿花農園で12年間近くも奴隷生活を強いられた黒人音楽家ソロモン(キウェテル・イジョフォー)の実話を映画化した伝記ドラマ。マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ブラッド・ピットら豪華キャストが脇を固めている。
アカデミー賞を受賞した初の黒人監督としても世間の注目を浴びたマックィーン監督。くしくも今夜、アフリカ系の父を持つオバマ大統領が来日するなどアメリカの変化を感じさせる出来事が重なり、マックィーン監督は「確かに初の黒人監督で賞を取ったといわれていることはうれしい。でも、そういう背景だからどうこうという意味づけは無意味なんじゃないかな。アフリカ系でも日本人でも白人でもやればできるわけで、あえて大したことではないと言いたい。人間であれば、機会さえあればということだと思う」と心境を語った。
また、映画についてマックィーン監督はキャストの中でも特にルピタ・ニョンゴとマイケル・ファスベンダーを挙げて「フィルターを通さずに、感情をじかに伝えることのできる貴重な役者だと思う」と絶賛。監督や演出などオーディションで役者を見る立場から自身が思う天才役者の定義についても語り、役者をミュージシャンに例え「メロディーを作るのが監督としたら、役者はそれに合わせて即興するわけです。好きに演じてもいいけど、その枠の中でやってほしい。そこからそれてしまうと、それだったらロボットを雇えばいいという話になる。枠の中で最大限に演じられる人が天才だと思う」と話した。
舞台あいさつには、本作に深く共感したという木村が花束ゲストとして登壇。映画『ブラインドネス』に出演した木村を覚えていたというマックィーン監督と和やかに会話を交わし、木村が「もしオーディションがあったら」とマックィーン監督作品に意欲を見せると、マックィーン監督は「そんな、オーディションなんて要らないと思うよ」と木村の出演を歓迎していた。(中村好伸)
映画『それでも夜は明ける』は公開中