巨匠ケン・ローチ監督、引退発言を撤回
劇映画からの引退を表明していたイギリスの映画監督ケン・ローチが発言を撤回し、今後も劇映画を製作することを明かした。77歳のローチ監督は昨年、今年のカンヌ国際映画祭に出品される『ジミーズ・ホール(原題) / Jimmy's Hall』が最後の劇映画になると明言。今後はドキュメンタリー作品に専念するとしていた。
ケン・ローチ監督の代表作『麦の穂をゆらす風』フォトギャラリー
The Hollywood Reporterの取材に応じたローチ監督は、引退発言が『ジミーズ・ホール(原題)』製作のプレッシャーから出たものであると説明。「あの作品を作り始めたときは、もう他の作品を撮ることはできないと思っていたんだ。ちょうど、プレッシャーがマックスになっていた時期だった。まだ撮影を始めてすらいないのに、準備にへとへとになって、家にも帰れない。そして、これから撮影が待っているという時期だったからね」と当時を振り返った。
映画製作がとてもタフな仕事であることを認めた上で、ローチ監督は「どれくらいの規模になるかはまだわからないけれど、ドキュメンタリータッチの小さな作品を作ることになっている」と劇映画の製作を今後も続けていくことを発表。次作が、20年近くにわたってコンビを組んでいる脚本家のポール・ラヴァーティとのタッグ作であることも明かした。
ローチ監督は1960年代に映画監督としてのキャリアをスタートさせて以降、現在に至るまで第一線で活躍を続けている巨匠。労働者階級や移民を題材にした社会派の作風で知られている。また、カンヌ国際映画祭の常連であり、2006年には『麦の穂をゆらす風』で悲願のパルムドールを獲得。今年2月には、ベルリン国際映画祭で名誉金熊賞を授与されている。(編集部・福田麗)