生存者が語る、ユダヤ人をナチスから救った外交官・杉原千畝とは?
第2次世界大戦中にナチスの迫害を受けたユダヤ人を救った外交官たちを描いたドキュメンタリー作品『ザ・レスキュアーズ(原題) / The Rescurers』について、マイケル・キング監督と生存者スーザン・スモーラーさんが語った。
本作は、英国の歴史学者マーティン・ギルバートとルワンダ虐殺を体験したステファニー・ニョムバイアーが、ナチスからユダヤ人を救った外交官たちや彼らの子孫に会い、現在の人種差別や虐殺への対策を考えるというもの。スーザンさんは戦時中にリトアニアで、日本の外交官、杉原千畝氏のビザの発行によって助けられた人物だ。
幼少時に杉原氏に助けられたスーザンさんは「父は彼に会ったけれど、わたしは彼を知らなかった。出産後、友人の薦めで作家マーヴィン・トケイヤーの『河豚計画』(1930年代の日本のユダヤ難民移住計画)を読んだとき、そこにわたしの家族に起きた出来事が書かれていると思ったの。そしてその時初めて杉原千畝の名前を知ったわ」と振り返った。
杉原氏にリトアニアで助けられる以前は「父は当時のポーランド政府の役人で唯一ユダヤ人だったけれど、1938年に役人を辞めて、欧州諸国から逃げてきたユダヤ避難民を守る団体の管理者になった。でも第2次世界大戦が勃発し、ポーランド政府の大半がナチスから逃れるために隣国に向かい、父もすぐにそれを追ったの。その時、まさかナチスが妻子にまで被害を加えるとは思わず、家族を残していった人が多かったけれど、父の運転手が家族を連れて行くべきだと言ってくれたおかげで、わたしたちはリトアニアに逃げ、後に杉原千畝に助けられたの」と語った。
道徳心から自らの命を顧みずにユダヤ人を救った外交官を通して、同様の虐殺が起きる国々に対して、誰が救いの手を差し伸べるのかと考えさせられる映画に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)