ピクサーの日本人スタッフ・堤大介が初監督に挑戦! 新たな一歩に手応え
映画『トイ・ストーリー3』『モンスターズ・ユニバーシティ』などで知られるアニメーション制作会社ピクサーで活躍する日本人・堤大介が、短編映画『ダム・キーパー』で初監督に挑戦した。SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2014での日本初上映に合わせて来日した堤が、あえて今、監督業に挑戦した理由を明かした。
堤はディズニー / ピクサーの映画『トイ・ストーリー3』『モンスターズ・ユニバーシティ』でアートディレクターとして活動中。その光や影の表現は高い評価を受けており、アニメファンであれば一度は名前を聞いたことのある存在だろう。本作では、ピクサーで同じくアートディレクターを務め、たびたびペアを組んできたロバート・コンドウと共同で監督した。二人がメインスタッフとして関わった『モンスターズ・ユニバーシティ』の後、本業の合間を縫って手掛けた作品だ。
「僕ら二人が常にペアになっていたので、ピクサーでは『そろそろ一人ずつやらせないといけない』という雰囲気があったんです。それで、彼とコンビを組むのは『モンスターズ・ユニバーシティ』が最後になるかもしれなかったので、最後に『彼とどこまでできるか』というのを試してみたいと思ったんです」と明かした堤。「普通、こういうショートフィルムをやるときは『こういう話をやりたい』と始めることが多いんですが、僕らにそういうのは全くない。お互いの信頼というか……彼と何かを作ってみたいというのから始まりました」。
制作期間はアニメーションとしては異例ともいえる半年の短さ。「とにかく完成させないといけないと思っていました。終わらせて、そこから学べることを学んで、次に生かそう、と。ここからが新たなスタートだと思っています」という堤は制作を振り返り、「本当にゼロから始まりました。でも一番楽しかったのは、自分たちが普段できないことで、やったこともないし、やり方も知らないことを解明していく作業。それを通して、自分が成長していくのが実感できました。僕は16年間、アメリカのアニメーション業界でやっていますが、このままじゃダメだろう、もっと自分を追い込まないと、ここで終わってしまう可能性がある、と。そうした気持ちは、ピクサーで映画を作るときのキーにもなるんじゃないかな」と確かな手応えを感じた様子であり、この経験をぜひとも“次”に生かしていきたいと力強く語っていた。
映画『ダム・キーパー』は、誰にも知られることなく街を大気汚染から守っている豚の少年が、転校生のキツネと友情を育んでいくさまを描いた短編。二人が絵を介してつながっていくさまは、アニメ制作を通じて信頼関係を築いていった堤とロバートの姿にも重なる。世界各地の映画祭で絶賛されている本作だが、残念ながら日本公開は現在のところ未定。だが早期の日本公開を求めているファンは決して少なくないだろう。(編集部・福田麗)