クリント・イーストウッド新作『ジャージー・ボーイズ』とは? 舞台版と映画版を演じた俳優が明かす
クリント・イーストウッド監督が手掛けたミュージカル「ジャージー・ボーイズ」の映画化作品について、試験興行のラホヤ・プレイハウス版、ブロードウェイ版、映画版と三つのプロダクション全てに関わった唯一の俳優ドニー・カーが語った。
9月公開予定!クリント・イーストウッド監督映画『ジャージー・ボーイズ』場面写真
同作は、1960年代に活躍した4人組のグループ「フォー・シーズンズ」(フランキー・ヴァリ、ボブ・ゴーディオ、ニック・マッシ、トミー・デヴィート)がスターダムをのし上がっていく中で、徐々にメンバー同士が対立するが、最終的にロック殿堂入りを果たすまでの過程が描いている。ドニーは、トミー・デヴィートの借金を取り立てる高利貸しのノーム・ワックスマンを演じている。
舞台俳優ドニーの出演経緯は「サンフランシスコ公演のとき、コーヒー休憩でスタバに入ろうとすると、クリント監督がちょうど出てきた。今作のリサーチのために公演を観に来ていたんだ。彼は公演後にバックステージで『素晴らしい演技だった』と言ってくれて、その2週間後にスクリーンテストを受けろとの連絡があった。ただ当初は、ジプ・デカルロ(マフィアのボス)かノーム・ワックスマンのどちらかを依頼されていたが、最終的にジプ役はクリストファー・ウォーケンが演じ、僕がノーム役になった」と驚きのキャスティングだったようだ。
クリストファー・ウォーケンとの共演は「僕は彼のことを“優しいジャイアント”と呼んでいる。彼からは『タバコを吸うときや眼鏡をかけるときなど、動きながら台詞を言うようにしろ!』と教わった。また、彼は撮影中にテイクとテイクの間は目を閉じていて、人前でもそれをやっているから、僕はわりと無礼な人だなぁとも思ったが、彼に『映画撮影では最初に疲れて見えるのは目で、撮影していないときは目を休め、そして目力を通して伝えろ!』とも言われた」と勉強になったそうだ。
舞台版と映画版の違いは「まず、映画のテンポは舞台とはだいぶ違う。舞台ではセットの家具などを俳優が動かしながら次のシーンが展開していく設定で、僕らは縫い目のないようにその作業をスムーズに行っていた。映画版はリアルそのもので、俳優がカメラに向かって話しかけるシーンは、まるで映画『グッドフェローズ』をほうふつさせていた」とイーストウッド監督の演出に惹(ひ)かれたようだ。
映画は無理にミュージカルシーンを増やさず 、ドラマに焦点を合わせているのが魅力だ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)