『ARISE』冲方丁×『S.A.C』神山健治、25年愛され続けた「攻殻機動隊」の魅力を語る
「攻殻機動隊」シリーズでおなじみの特殊部隊・公安9課がいかにして生まれたかを描き出す『攻殻機動隊ARISE』(以下『ARISE』)の構成・脚本を担当する作家の冲方丁と、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(以下「S.A.C.」)の監督・脚本を担当した神山健治が、「攻殻機動隊」の魅力を語り合った。
『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』フォトギャラリー
士郎正宗の原作コミックの連載開始が1989年。そこから25年たってもなお愛される本シリーズの魅力を神山は「ネット時代を可視化した先駆者としての強みはもちろんのこと、特殊部隊である公安9課という刑事物としての側面、肉体を喪失した人間が何を思うのかという視点といった多面性があったからこそ、25年も生き延びたと思う」と分析する。
全ての原点である士郎正宗のコミック版、そして「攻殻」ワールドを世界に知らしめた押井守監督の『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』で熱狂的なファンを持つ本シリーズを引き継ぐことは並大抵のことではなかったと言う二人。「みんなの思い入れが深いから、(脚本執筆時の)初期には多くの意見が飛び交ってカオスだった」と振り返る冲方は、「しかも、各話の監督ごとに物語の個性を出してほしいが、全体のトーンは統一させてくれと。最初、この人たち(制作のProduction I.G)は何を言っているんだろうと思いましたよ」と笑う。それを聞いた神山も「それは『S.A.C.』の頃からそう。本当に苦労されたと思います」としみじみ。
さらに「『S.A.C.』には相当なシンパシーがありました」と切り出した冲方は、「やはり意図的に地続きで作ろうと思ったので、隙あらば『S.A.C.』から引用させてもらいました。ビジュアル的には違うベクトルに振ったため、その幅を埋める作業は脚本でやらなければならなかったですから」と付け加える。
そんな『ARISE』も、次作『border:4』でいよいよクライマックスを迎える。「『border:4』のテーマはオマージュ」と断言した冲方は「『攻殻』といえばこれだよね、と思う要素は盛り込めるだけ盛り込みました。いわば『攻殻』全部載せ的な作品になったので、お楽しみに」と期待をあおっていた。(取材・文:壬生智裕)
『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』は6月28日より全国上映【2週間限定】