原発問題、被害者に向き合わない政府に怒り!宇都宮健児氏が苦言
日本の原子力政策と東京電力への怒りを込めて製作された現在公開中の映画『あいときぼうのまち』のトークイベントが3日、都内・テアトル新宿で行われ、元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児弁護士と本作の脚本を手掛けた井上淳一が登壇した。宇都宮氏は「被害者の痛みを思い出すだけでなく、心に刻むこと」の大切さを訴え、「原発問題に無関心な人にこそ、この映画を観ていただきたい」と強調した。
本作は、原子力エネルギーに翻弄(ほんろう)され続けた、福島のある家族の4世代70年にわたる葛藤の日々を描いた壮大な人間ドラマ。戦時中のウラン採掘、原子力発電所建設への反対運動、そして東日本大震災と福島第一原発事故という、原子力エネルギーをめぐる出来事に傷つき、絶望しながらも生きていこうとする人々の姿を描く。
本作について宇都宮氏は、「非常に痛々しい映画ですね。父親が農民だったので、畑を取り上げられるときのつらさがよくわかる。また、原発誘致に反対したことによって村から追い出され、痛い思いをした方もたくさんいたことでしょう。そして、3.11でバラバラになった家族。自分の人生と重なる部分もあったので本当に痛々しかった」としみじみと語った。
また、福島の原発問題に対して宇都宮氏は、「東電だけの問題ではなく、起こったことを無かったことにする風潮があり、政府は被害者の一人一人と向き合おうとしなかった。安倍総理は汚染問題をコントロールできていると言っているが次々と問題は起きている。それにもかかわらず何事もなかったかのように(原発を)再稼働しようとしており、それどころか輸出まで考えている」と怒りのコメント。
さらには、時折、ドイツのヴァイツゼッカー大統領の有名な演説を引用しながら、一番大切なのは、心に刻むことだと力説する宇都宮氏。「何度も、何度も、被害者の方々のことを思い出し、心に刻むこと。被害を受けた方がどういう思いをされたのかということを延々と思い出すことが大切」と訴えた。
その真摯(しんし)な言葉を受けた井上は、「映画は人間ドラマとして書き上げたつもりですが、そこで思うのは絶対に忘れないこと、想像すること、そして怒ること、足を踏まれた人だけしか痛みがわからないなんてだめだと思う。われわれ人間には、想像する力がある」と強調した。(取材:坂田正樹)
映画『あいときぼうのまち』はテアトル新宿で公開中(全国順次公開予定)