「くるみわりにんぎょう」英国人イラストレーターから見た宮崎駿
「三鷹の森ジブリ美術館」(日時指定の予約制)で宮崎駿監督が「クルミわり人形とネズミの王さま展」を企画するきっかけとなった絵本「くるみわりにんぎょう」(徳間書店)の英国人イラストレーター、アリソン・ジェイさんが来日し、宮崎監督と対面したときのことを語った。
「くるみわりにんぎょう」はバレエで知られる有名なクリスマスの物語。名付け親のドロッセルマイヤーさんからクルミわり人形をもらった少女クララが、恐ろしいねずみの王からクルミわり人形を助けたり、お菓子の国に招待されたりと不思議な体験をするさまが描かれている。『風立ちぬ』の製作でぼろぼろになっていた宮崎監督は優しいイラストのこの絵本に癒やされ、絵本や原作を何度も読み返した上で「クルミわり人形」の不思議な魅力を子供たちに伝える展示を企画した。
アリソンさんは自身が手掛けた絵本が同展のきっかけとなったことに「信じられないです。彼みたいな世界的な巨匠がわたしの本を読んでくださったということにびっくりしました」と恐縮気味。対面した宮崎監督の印象について「絵本をとにかく褒めてくださって、いかに気に入ったかということを本当にたくさん話してくれたんです。とにかくそれに圧倒されっぱなしでしたが(笑)、何てチャーミングですてきな優しい人なのだろうと思いました」と明かした。
宮崎監督は徹底的に絵本を読み込んでいたようで、実際にイラストを指さしながら事細かにアリソンさんに感想を伝えたという。「小さく描かれたキャラクターの動きといったディテールにも全て気付かれていたみたいで、『ここを歩いているドロッセルマイヤーさんが、(ページをバッとめくって)ほらここに来ている!』と説明してくれるのです。そんなに細かく見てくださったんだ、ととにかく驚きました」。
さらに宮崎監督は、お菓子の国で我慢できずにあくびをするクララのイラストを「ここがいい!」と絶賛し、「子供たちはこれで『あ、クララは自分と一緒なんだ』というふうに思う。仕掛けとして素晴らしい。ここにこのイラストを載せることで子供の心をつかんでいる」と分析までしてくれたとのこと。アリソンさんは宮崎監督の熱意に少々圧倒された様子ながら、自身の絵本について言葉を交わしたことをうれしそうに振り返っていた。
「クルミわり人形とネズミの王さま展」は、そんな宮崎監督が5か月という制作期間を費やして企画から監修まで行った展示。原作であるE・T・A・ホフマンの児童書「クルミわりとネズミの王さま」(岩波書店)の物語の構造やそこに込められた思いをさまざまな角度から読み解き、自ら描き下ろした10数枚の展示パネルで紹介しているほか、アリソンさんの絵本を拡大・複製して展示し、お菓子の国の場面については立体造形物で再現している。(編集部・市川遥)
三鷹の森ジブリ美術館の入場は日時指定の予約制 ※事前に必ず確認を
毎月10日(土・日・祝の場合は翌平日)より、翌1か月分を全国のローソンにて販売。ウェブ、モバイル、店頭Loppiにて予約、ローソン店頭で引き換え。
企画展示「クルミわり人形とネズミの王さま展」は2015年5月まで(予定)