ディズニーで吹き替え声優はどうやって決めている?担当者が明かす
大ヒット公開中のディズニー映画『アナと雪の女王』では主題歌・劇中歌はもちろんのこと、それを歌う日本語版声優の存在にもスポットが当てられている。では、映画製作会社はどうやって日本語版の声優を決めているのか? 誰もが気になっていながらも、なかなか知る機会のないその過程を、『アナと雪の女王』のキャスティングを担当したディズニー・キャラクター・ボイス・インターナショナル部門の担当者が明かした。
担当者いわく、作品の制作が開始すると、本社からオーディションによって声優の承認が必要になるキャラクターの指示が送られてくるとのこと。『アナと雪の女王』のようなミュージカルの場合はせりふだけでなく、歌のオーディションもあり、この段階でチェックするのは「年齢感」「声の高さ」「声の質感」「演技力」「歌唱力」など。日本側の審査で、ある程度絞った上で本社に音声を送り、承認をもらうことになる。
そうしたキャスティングの過程で最も大事にしていることについて、担当者は「オリジナル版と変わらない日本語版を作るということですね。『レット・イット・ゴー~ありのままで~』の25か国語バージョンを聴いていただけると、とてもわかりやすいのですが、言語は変わってもキャラクターの声は変わりません。そして声だけでなく、表現も変わらないように気を付けていきます。日本語版を見ていただく方々に、オリジナル版と同じ体験をしてもらえるように心掛けているんです」と明かす。
「音声は見えないものですが、高い低い、太い細い、質感や厚みなど、さまざまな要素が一つになって、聞いてくださる方の印象を左右する情報になるんですね。キャラクターたちはデザイン、色彩、行動などで『この人ってこういう人なんだな』『こんなことしそうな人だな』といろいろイメージされると思うんですが、声も同じようにキャラクターをイメージする大切な役割を担っていると思います。日本語版でもそこが失われないように注意してやっています」。
『アナと雪の女王』ではメインキャストに舞台出身の実力派をそろえたことも話題になったが、それも上記のポリシーを踏まえた上での決断だったという。「(『アナと雪の女王』は)ミュージカル映画として新しい挑戦をしている作品だと思いました。せりふと歌が今までになく見事に融合しているんですよね。それを実現するためにオリジナルキャストは舞台出身の実力派がそろっています。日本語版でも負けないように演技と歌の両方を高いレベルで表現できる人を探さなければなりませんでした」。
通常であれば、せりふと歌で別の声優を起用するという選択肢もあったが、本作では「せりふと歌を同じ人にやってもらうことが、何よりも必要だと感じていました」とのこと。もちろん、両方できる人となると選択肢が狭まるため、人選はより困難になるが、「これをクリアしないと、この作品は絶対成功しないぞという気持ちでした」といい、結局は全ての条件に合致した神田沙也加と松たか子が抜てきされた。
「神田さんも松さんも舞台経験が豊富なことも良かったと思います。しっかりと声を出す訓練ができていると声が浮かずにキャラクターたちにしっかりとなじむんです。演じてもらった感想としては、お二人とも本当にぴったりでした。それぞれの役にぴったりというのはもちろんですし、姉妹としてのバランスも本当によかったですね」と担当者は振り返る。
ディズニーにおけるキャスティングの歴史は、創設者ウォルト・ディズニーがミッキーマウスの声優を務めた昔にまでさかのぼる。そのころから継承されているものとして「キャラクターが本当に存在しているんだと信じてもらえるような声にする、ということですね」と担当者は明かすと、その一方で「時代と共に新しく取り入れていることとは少し違うかもしれませんが、新しく生まれるキャラクターはもちろん、昔からのキャラクターたちも時代と共に変化していきます。今の時代を反映しつつ、でも一過性のものにならないように、キャラクターたちがいつまでも生き続けられるように声についても考えていくようにしています」と説明した。
「キャラクター・ボイスという部署は劇場作品だけでなく、ブルーレイ・DVD作品やディズニー・チャンネル、Dlifeなどのテレビ作品の日本語版も監修しているんですね。日々多くの作品と関わることで、さまざまな役者さん、歌手の方々とお仕事をする機会を持ち、キャスティングに幅を持てるようにしています」。声優はキャラクターに命を吹き込むとはよくいうものの、その声優が決まる裏側には、表に出ないスタッフのこうした奮闘があったのだ。(編集部・福田麗)
映画『アナと雪の女王』は公開中
「MovieNEX」は7月16日発売 税抜き:4,000円