靖国に眠る死者の声、どうよみがえらせる…新作ドキュメンタリーが描くこと
7日、映画『靖国・地霊・天皇』のトークショー付き上映会が都内で行われ、メガホンを取った大浦信行監督と、ワハハ本舗のピン芸人、コラアゲンはいごうまんが出席した。
本作は戦争で命を落とした246万人余りの戦没者が合祀(ごうし)されている靖国神社について、左派・右派を代表する2人の弁護士が思いを語る姿を追ったドキュメンタリー。双方の意見を取り上げながらも、観るものに右か左かを問うわけでも、論争を主題とするわけでもない、イデオロギーを越えた視点で「靖国」の存在に迫る。
天皇をモチーフにした作品などを発表している大浦監督は、「靖国を擁護するのはその人の考え方で生き方。反対もそう。その論争を映画で描いてもあんまり意味はない。それは本とかテレビの方が徹底的にやりますから、そっちのほうが面白いでしょう。でも僕はそこに主眼はなかった」とキッパリ。続けて「右と左の人の靖国への思いには納得ですけども、靖国に眠る246万人の死者たちとわれわれが対話できるのかという努力や、想像力を持って、どう現実の中に死者たちの声をよみがえらせるのかがポイントだった」と本作に懸けた思いを語った。
実際の取材やリサーチで得た情報に基づき、「宗教」「宇宙」「刺青」など幅広い話題をネタとしているコラアゲンは、そんな大浦監督を前に「僕でいいんですか? 僕、本当にアホですよ」と恐縮気味。一方で、本作について「すっごくエネルギーを感じた。靖国が題材なら、恐らくこうだろうというイメージを見事にたたき潰された」と絶賛した。
トークショーの数日前、大浦監督にも取材をしたというコラアゲンは、「かわいらしく心配りのできる人」と監督の人柄にも魅了された様子。右派と左派、双方のコミュニケーションを通して作られた本作は、監督の人柄がなければ成立し得なかったと述べ、最後は監督とそろって「若い人たちにぜひ観て欲しい」と観客に呼び掛けた。(取材・文:名鹿祥史)
映画『靖国・地霊・天皇』は7月19日よりポレポレ東中野ほか全国順次公開