フィリップ・シーモア・ホフマンさん最後の主演作、『誰よりも狙われた男』監督が語る!
46歳の若さで亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンさん最後の主演作『誰よりも狙われた男』について、アントン・コルベイン監督が語った。
フィリップ・シーモア・ホフマンさん最後の主演作 映画『誰よりも狙われた男』場面写真
本作は、スパイの疑いをかけられたチェチェン人イッサは、ドイツのハンブルクに潜伏しながら、人権弁護士アナベルを頼りに銀行家トミー・ブルー(ウィレム・デフォー)を通して政治的亡命を図るが、テロ対策の諜報員ギュンター(フィリップ・シーモア・ホフマン)やCIAエージェントのマーサ(ロビン・ライト)の思惑に巻き込まれていくというドラマ。ジョン・ル・カレの同名小説を映画『コントロール』のアントン・コルベインが映画化した。
フィリップさんとの仕事は「今作はフィリップに支配された映画と言っても過言ではなく、俳優として観客を惹(ひ)き付けてくれる。彼の死は映画に深い意味合いをもたらした。もちろん彼の死因(薬物の過剰摂取)については不満で、今作を鑑賞することも最初は難しかったが、彼の仕事ぶりは本当に素晴らしい。長年さまざまな役柄を演じてきて、多くの人は彼の風変わりな役柄を覚えている。だが今作では、諜報員ではあるが、ごく普通の人物だ。そんなごく普通の役柄でさえも、さまざまな雰囲気を醸し出し、まさに一流俳優の演技を披露している」と感謝した。
ギュンターという役柄は「諜報員ではあるがジェイソン・ボーンやジェームズ・ボンドのようなスパイではない。デスクワークや監視作業の繰り返しなど、諜報員としてごくありふれた作業をこなしている」と説明した。映画内ではイッサ役の俳優にも注目だ。「イッサ役にはあまり知名度のない俳優を使うつもりで、ドイツ、エジプト、イランの俳優などを探したが、結局イッサ役に適したロシアの俳優グレゴリー・ドブリギンに決まった」と明かした。
アントン監督は写真家の経歴も持つが、撮影監督とのタッグについては「過去に製作したミュージックビデオでは、僕が撮影監督も務めていたから、個人的に完全に信頼して撮影を委ねるのは難しく、どんな映像にするかこだわり持っていて、常に何かしら撮影の注文をしていた。だが今作は例外で、それほど注文せずに、手持ちカメラで緊迫感と親密感を描いたつもりだ」と映像にも自信をのぞかせた。
映画は、複雑な諜報戦が繰り広げられる中で、フィリップ・シーモア・ホフマンさんの演技が秀逸で、観客を一気にクライマックスまで惹き付けていく。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)