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ツァイ・ミンリャン監督、引退は映画界との決別のため…撤回の可能性は?

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ツァイ・ミンリャン監督とリー・カンション
ツァイ・ミンリャン監督とリー・カンション

 劇場公開作からの引退を宣言した台湾のツァイ・ミンリャン監督と主演男優リー・カンションが映画『郊遊<ピクニック>』のPRで来日し、インタビューに応じた。商業映画とは一線を画す芸術性の高い作品を発表し、台湾映画界をけん引してきたツァイ監督は「彼がいなければわたしは映画製作に興味を持たなかったと思う。『彼の顔を撮りたい』という衝動が原動力になった」とあらためて長年のパートナーであるリーに感謝した。

映画『郊遊<ピクニック>』写真ギャラリー

 ツァイ監督は初長編作『青春神話』(1992)から一貫してリーの顔を撮り続けてきた。物語も彼の成長を見守るかのように、予備校生から時計売りの露天商などを演じさせ、本作ではついに2人の子供を男手一つで育てる父親の役に。一連の作品は二人のアンソロジーだ。リーは「監督は、時の流れによって変化していくわたしの顔を記録したかったのでしょう。それにわたしの雰囲気が、監督のお父さんにとても良く似ていることも知っています」と語る。

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 本作はベネチア国際映画祭審査員特別大賞を皮切りに、中国版アカデミー賞こと台北金馬奨では最優秀監督賞と最優秀主演男優賞を受賞し、ツァイ監督が涙ながらに喜びを表現していたのが印象的だった。そこには海外で高い評価を受けるも国内ではなかなか作品が理解されず、その抗議から金馬奨のノミネートを2度辞退した遺恨もある。引退の理由の一つには、ますます自分たちが生きづらくなっている映画界との決別の意味合いもあるようだ。

 ツァイ監督は「そんなわたしたちにとって国際映画祭は作品を世間に認知してもらう大きな窓口でした。しかし昨今の映画祭ですら商業化の色合いが濃くなってきています。なので、本作がベネチアでコンペ入りしたときは、うれしくて涙を流したくらい。プレス試写時もわたしたちの映画は途中退席者が多いことで有名ですが、今回は14分の長回しがあるにもかかわらず帰らなかったとか。ようやくわたしたちの作品が受け入れられてきたようです(笑)」と話していた。

 引退はツァイ監督の体調不良もあるが、リーもまた今春に軽い脳梗塞で倒れ、「二人で健康に気を配るようになった」とツァイ監督が明かす。体調に不安は残るものの創作意欲は衰えず。8月には台北でリー主演&ツァイ演出の舞台「玄奘:The Monk From Tang Dynasty(英題)」を上演している。ツァイ監督は「これからはもっと自由な創作をしたい。長編も? ぜひ(笑)」と語り、引退撤回の可能性を匂わせていた。(取材・文:中山治美)

映画『郊遊<ピクニック>』は9月6日よりシアター・イメージフォーラムにて公開

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