北村一輝主演の米映画『Man From Reno』、藤谷文子のバイリンガルでクオリティがアップ
北村一輝主演の話題のアメリカ映画『マン・フロム・リノ(原題) / Man From Reno』についてデイヴ・ボイル監督が語った。
本作は、日本のミステリー作家アキ(藤谷文子)が、喧騒(けんそう)の日本を離れサンフランシスコを旅行中に、ホテルのバーで不思議な魅力を持つ男アキラ(北村一輝)に出会い、殺人事件に巻き込まれたことで、真相究明のために町の保安官(ペペ・セルナ)に協力するというドラマ。映画『ホワイト・オン・ライス』のデイヴ・ボイルがメガホンを取り、ロサンゼルス映画祭のコンペ部門でグランプリを獲得した秀作。
映画は自然な日本語で描かれている。「最初に脚本全てを英語で執筆し、その後脚本を知り合いに翻訳させた。そして、日本で働くスクリプトスーパーバイザーや日本のプロデューサーを通して、直訳だった脚本をシーン自体は変えずに、日本語の台詞を自然な会話にした。もっとも藤谷文子は完璧なバイリンガルで、彼女と共に撮影2、3日前に日本語の台詞部分をよりリアルで、さらにフィルムノワールのスタイルを維持できるものにした」と丁寧な作業を施したようだ。
アメリカ映画の現状についてデイヴ監督は「(撮影を行った)人種のるつぼであるアメリカでさえ、異国文化の交流を描いた映画はまれで、特にアジア文化に関しては余計にそれを感じる」と不満をあらわにした。さらに「文化交流のアングルで描くことは、必ずしもメッセージ性があるとは限らないが、ストーリー構成がより豊かになる。ただ注意すべき点は、言語の違いによって生まれる人と人との境界線をストーリーで示せても、キャラクターが自身の文化を主張するようなことは避けて執筆しなければいけない」と語った。
藤谷演じるアキと北村演じるアキラは謎を秘めている。「今作では二人ともが謎であることと、何度も鑑賞したくなる価値のある作品にすることが重要だった。なぜなら観客にミステリーの謎を徐々にひも解いてほしいが、観客にスプーンで物を食べさせるような理解しやすいものにしたくなかった。だからアキとアキラが初対面でもじっくり観客がこの二人に興味を持つ演出をし、ミステリー作品を鑑賞していることさえも忘れるくらいにした。この瞬間から観客は疑問を抱き、最後までそれがわからないんだ」と演出に自信をのぞかせた。
映画は、日本文化に精通した監督が、演技派俳優とタッグを組んだミステリーの秀作だ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)