『NANA』『黒執事』監督の描く四角関係!原点回帰の一本に笑顔
女優の波瑠主演の映画『がじまる食堂の恋』が28日、大分県由布市で開催中の第39回湯布院映画祭で上映され、大谷健太郎監督らがティーチインを行った。
『NANA』『黒執事』などを手掛ける大谷監督が本映画祭に参加するのは、劇映画デビュー作『avec mon mari アベック モン マリ』を上映した2001年以来13年ぶり。大谷監督は「この映画はデビュー作や『とらばいゆ』のような四角関係や会話劇に再び挑んだ、自分にとっては原点回帰の作品。この作品でまた映画祭に呼んでいただけてうれしく思います」と晴れ晴れとした顔を見せた。
自身の原点だという「四角関係」について、「どうしても三角関係というものは、2人で1人を奪い合ったり、1人が2人をてんびんにかけたりして、ドラマが重くなりがち。でも、そこにもう1人入れると、そこがゴチャゴチャになって、コミカルになる」と解説する大谷監督。意識している映画監督として、『ニノチカ』『生活の設計』など軽妙洒脱(しゃだつ)な作風で知られるドイツの映画監督エルンスト・ルビッチの名前を挙げると、「ルビッチの男女の会話劇に憧れてやっている部分があります」と明かした。
本作の権利は、沖縄県名護市の有限責任事業組合(LLP)が保有。ターゲットとなる30~40代女性に訴求し、街の活性化と観光誘致を図るために、撮影隊を地元に誘致するのではなく、地元が主体となって映画制作を推し進めているのが特徴だ。本作の製作統括を務める同組合の今村展大氏は「この映画にはほぼ方言が出てきません。それから三線など、いかにも沖縄文化というものは出さないようにしてくださいとオーダーした」と述懐。その言葉通り、劇伴としてボサノバのリズムがやわらかなムードを作るなど、いわゆるご当地映画とは一線を画すものとなった。
「正直、これほどのお金をかけて、これほど(地元のことを)何も言わないものはないと思う」と振り返る今村氏は、「地元の人からはなんで三線を入れないんだとも言われましたし、ここを撮ってほしい、といったリクエストが相次いだが、それも断った。やはり地元民だけが喜ぶ観光PVになってはだめで、純粋に良い映画を作らないと(逆説的に全国に)訴求しないからです」とその思いを語った。(取材・文:壬生智裕)
第39回湯布院映画祭は8月31日まで由布市の湯布院公民館ほかにて開催中
映画『がじまる食堂の恋』は9月20日より全国公開(9月13日より沖縄・名護先行公開)