スパイダーマンがヒゲボーボーに…誰だかわからない?
第71回ベネチア国際映画祭
現地時間29日、第71回ベネチア国際映画祭で映画『99ホームズ(原題) / 99 Homes』の公式会見が行われ、ラミン・バーラニ監督、アンドリュー・ガーフィールド、マイケル・シャノンらが登壇した。
本作はアメリカの経済危機によって、ある日突然に家を失ってしまった主人公が、悪徳不動産ブローカーのもとで働くことになり、生きるために必要な金と良心との間で苦悩する姿を描いたストーリー。
この日のアンドリューは、映画『アメイジング・スパイダーマン』シリーズで、スーパーヒーローを演じたさわやかな姿から一転、ボーボーのアゴヒゲをはやして誰だかわからない状態に! 記者から「何かの役づくりですか?」と聞かれるも、「逆にこのヒゲをいかせる役があるなら、ぜひやりたいんだけど、特に何も……」と苦笑い。作中で冷徹な不動産業者を熱演するマイケルもこの日は、ボサボサ頭。だが役のイメージとあまりに違う彼らの姿が、逆に彼らの演技力の高さを感じさせたのか、バーラニ監督が「自分の映画人生の中で最も素晴らしい俳優たちです」と紹介すると集まった記者から大きな拍手が送られた。
作中で一人息子と母親を抱えて、家を追い出される男を演じたアンドリューは「家を失った人たちに話を聞いて思ったのは、彼らがたくさんの人にこの真実を知ってもらおうとしていることだった。それはこの映画を作る上でとても大切なことだったんだ」と話し、マイケルもまた「不動産についてはいつも疑いを抱いていたんだけど、この映画に出演したことによってその疑いが確信に変わった。だから不動産には絶対に手を出さないと思う」とコメント。作品が持つ大きな責任を感じながら演じたことを明かした。
また、アメリカの不動産バブル問題について、撮影前からリサーチを行っていたというバーラニ監督は「本当にひどい実態でした。映画の中でもアンドリュー演じる主人公が、法廷でひどい扱いを受けるシーンがありますが、実際に法廷に行って調査をしていたときに、移民の方が裁判中に通訳を入れることすら許されていなかった。でも僕がノートパッドを出した途端に急に変わって、どうなっているのかと思ったら、どうやら僕を記者だと思ったらしく……。何時間もそこから動けませんでしたよ」とあまりにもいい加減な状況を目の当たりにしたショックを伝えた。
ある日突然警察と不動産業者がやってきて「数分間で荷物をまとめて出て行ってください。この家はもうあなたの家ではありません」と言われ、身一つでモーテルに転がり込む家族たち。映画で描かれているのは、小さな子供がいる家族も、一人暮らしの老人も、多くの弱者がわけのわからぬまま貧困の生活へと転落していく恐ろしさだ。アメリカ政府が今なお生み出しているたくさんの家族の悲劇についてバーラニ監督は「アメリカが生み出した最悪な状況に、この会見場にいる多くの人たちも嫌気がさしていることでしょう。この映画は大きな打撃になると思っています。この問題を世界中のみんなが止めなければいけない」と怒りを込めて思いを語っていた。(編集部・森田真帆)
第71回ベネチア国際映画祭は現地時間9月6日まで開催