ALSを経験してほしくない…闘病中のヒロ氏が警鐘を鳴らす
定期上映イベント「原宿シネマ」と、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の認知を高める活動を精力的に行っている一般社団法人「END ALS」との特別コラボ上映トークショー「原宿シネマ×END ALS@代官山T-SITE」が16日に開催され、自らALSと闘いながら同財団法人を立ち上げたプランニングディレクターの藤田正裕(ヒロ)氏が、この日のゲスト館長を務めた。
「原宿シネマ」は毎回、館長として招かれたゲストが、思い入れのある“人生の一本”をセレクトし、それぞれのスタイルで映画を紹介していくユニークなイベント。ヒロ氏は、大自然の峡谷で絶体絶命に陥った青年が奇跡の生還を果たした実話ドラマ『127時間』を選び、共感した部分や困難に立ち向かうときの気持ちなどを代弁者やスライド、映像を通して熱く語った。
学生時代から念願だった広告会社に就職し、天職と思えるほど充実した日々を送っていたヒロ氏。ある日突然、ALSを宣告され、人生は一変する。「余命3~5年、原因不明、治療法なし。ゆっくり死んでいく自分の体をただ見ているしかない。1日ごとに筋肉が動かなくなる恐怖を想像してみてください」と当時の気持ちを振り返る。
「生存率0%と言われても、絶対に生きてやる」と決意したヒロ氏は、気管を切開し、声を奪われた。だが、逆に心の声が大きくなったというヒロ氏は「ALSを誰にも経験してほしくない、自分の体が弱くなればなるほど誰かを助けたい」という思いが日増しに強くなっていったという。
そして、その頃に観た映画が『127時間』だった。「この映画は、自分との闘いを描いている。絶望、我慢、平常心、覚悟……さまざまな心の葛藤を自分と照らし合わせながら、皆さんにも観ていただきたい。人生は毎日がギャンブル、明日何が起きるかわからない。誰もがALS、あるいは他の病気や事故に遭う可能性がある」と警鐘を鳴らす。
さらに、「(この映画の主人公は)耐え抜いたからこそ、元の生活に戻ることができた。わたしは次の世代にALSの悪夢を残したくない。『END ALS』、つまりALSを終わらせる。勝たなければいけない」と改めてALSと闘う決意を表していた。(取材:坂田正樹)